映画「バイス」

アメリカの最強の副大統領とももてはやされるディック・チェイニーの半生を追った映画「バイス」を下高井戸シネマにて鑑賞。
子ブッシュが大統領時代の副大統領を務め、その時代を中心に追った、彼の政治力や心情などを、少しパロディ調に描いた作品で、マイケル・ムーア監督の毒舌風刺ドキュメンタリーと見間違うばかりの作品。クリスチャン・ベイルがまさに瓜二つの顔と体型に変身して熱演しています。
名門のイェール大学に入学したものの、飲んだくれて退学し、電気工になったムーア。そんな彼を奮起させたのが妻のリン・チェイニー。大学に入りなおして、いつの間にか頭角を現してくる場面は全く描かれませんが、ウィキペディアによれば、ワイオミング大学に編入学し、同大学院、ウィスコンシン大学大学院博士課程を先行し、そのころに当時のウィスコンシン州知事のスタッフになったことが政界入りのきっかけとのこと。その後ラムズフェルドとの親交なども得て、実力を発揮して、フォード大統領の首席補佐官、下院議員、親ブッシュ大統領時代に国防長官などを務め、子ブッシュから副大統領候補に指名され、大統領をもしのぐ権限を持つ副大統領になっていく姿が描かれます。
この映画で最も軽視されたのが子ブッシュ大統領の存在。放蕩息子から親の威厳でテキサス州知事になり、ついには大統領にまで上り詰めるのですが、全くの軽薄大統領として描かれます。子ブッシュからしてみると、名誉棄損で訴えたい気分があるのではないかと考えてしまうほど。
結局ブッシュ時代のイラク戦争、9.11の報復としてのアフガニスタン侵攻、更にはリーマンショック時の対応など、ブッシュはチェイニー副大統領やラムズフェルド防大臣のネオコンや、ポールセン財務長官などの銀行家の操り人形でしかなかったのかと、想像してしまいます。
今のトランプ政権も、極右のネオコン側近たちがうようよしており、トランプ自体もそんなにおつむがいいようには思えないので、現在の対イラン政策も、側近ら戦争したい政治家=軍需産業の言いなりになる可能性も無きにしも非ず。とにかく戦争が好きなアメリカですから、大統領が操り人形になってしまった際のリスクは計り知れません。
この映画は、そんな恐ろしさを内蔵した現代アメリカの大統領中心の政治のリスクを十分に示してくれています。
結局、戦争を始めて人的・物的・財政的に大きな犠牲を出し、明確な勝利を得ることができなくても、だれも責任を取らないアメリカの怖さが垣間見えました。
今日はこの辺で。