映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」「クーリエ 最高機密の運び屋」

3月26日(土)、ギンレイホールにて、いずれも実話を映画化した骨のある作品二題鑑賞。

イギリス映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」は、9.11アメリ同時多発テロの容疑者として拘束され、長期にわたりグアンタナモ刑務所に拘留され、拷問を受けた末に虚偽自白したモーリタニア人男性と、その弁護をするアメリカ人弁護士の姿を描く。グアンタナモ刑務所はキューバにある米軍基地内にある刑務所で、正式には刑務所ではなく「収用キャンプ」。イラク戦争やアフガン紛争のテロ容疑者を収容するために2002年に設立された新しい施設で、その残酷な取り調べや極悪な待遇が世界的にも問題となり、オバマ大統領が閉鎖をしようとしたが、共和党の反対で未だに存続している施設。本作は9.11同時多発テロで、テロ実行者をリクルートした容疑をかけられたがために、ブッシュ政権の国防長官だったラムズフェルドの命令で特別な拷問を受け自白したが、その拷問記録が弁護士の情報公開請求で発覚し、無罪を勝ち取る日々を描く。人権弁護士役はジョディ・フォスターが演じ、検事役がベネディクト・カンバーバッチ。但し、検事も拷問の事実に気づき、起訴できないとして解任されることになる。残酷な拷問シーンと母親を逮捕するというような脅しは、想像を絶する極悪非道としか言いようがなく、そのシーンが延々と続く。モーリタニア人容疑者は無罪になるものの、何故かオバマ政権時代も収容所から釈放されなかったことがエンドロールで出てくるが、その理由は説明されていない。グアンタナモ収容所では、特にアメリカ本土がテロの対象となったがために、ブッシュ政権はあらゆることをやって、冤罪者も含めて容疑者を徹底的に拷問していたことが示唆される映画であった。ちなみに「黒塗りの記録」とは最初に情報公開請求で出てきた記録が、ほとんど黒塗りだったことから付けたもののようです。

イギリス・アメリカ合作映画「クーリエ 最高機密の運び屋」も、キューバ危機時のスパイの実話をもとにした映画。イギリス人セールスマンがスパイとしてロシアに商社マンとして行き来し、ロシア商務省の西側スパイから手渡された極秘情報をイギリスに運ぶ役を負わされ、最後は自分の危険を顧みず、ロシア人の協力者を亡命させるために危険なソ連に行くことに。フルシチョフキューバへの核持ち込みを阻止する重要な役割を果たしたスパイだが、結局ロシア人協力者はソ連で銃殺になり、イギリス人スパイは1年以上拘留されたのち、スパイの交換でイギリスにもどることができるのだが、そのスパイ役を演じたのが、ベネディクト・カンバーバッチで、迫真の演技を見せてくれる。

フルシチョフのそっくりさんを起用して、いかにも短気な性格を演じていたが、その辺の人間性については大いに演出もあるのでしょうが、ソ連にしろ今のロシアにしろ、独裁者が育つ土壌がロシア台地にはあるのか、それとも体制自体の問題なのか。ロシアという広大な国土を有する「ユーラシア国家」の不気味さは今でも変わらない。

今日はこの辺で。