柚月裕子「凶犬の眼」

柚月裕子「凶犬の眼」読了。「孤狼の血」で主人公大上刑事の部下となり、大上のやくざとの付き合い方や、やくざの抗争の何たるかを、大上哲学で学んだ若き刑事、日岡が今回の主人公。
大上は前作で殉職し、日岡も違法捜査の責任を取らされて田舎の駐在所に飛ばされている状態から始まる。そんな田舎に仁義を重んじるやくざの国光がゴルフ場建設現場に現れる。国光は大組織の親分を殺したことから指名手配中だが、身を隠している中、日岡と親交を結ぶのが前半。
はっきり言って、前半はこうした二人の交わりが中心で、やくざ小説らしくなく、饒舌な感じを否めない。この小説で盛り上がりがあるのは、国光の居場所がばれ、人質を取って立てこもってからの場面しかない。柚月さんは複雑なやくざの世界の勢力争いを、いくつもの組の、たくさんのやむざ者の名前を挙げて説明書きのように語っているのですが、盛り上がりに欠けます。
最後は一芝居打って人質事件は解決しますが、やくざと兄弟の契りを結び、国光の親分を殺した男を始末する・・・。
amazonnのレビューを見ると結構高得点なのですが、前作と比べなんとなく物取りなさが残りました。
今日はこの辺で。