ノンフィクション「リーマンショックコンフィデンシャル」

リーマンショック時のアメリカ大手金融会社及び財務省FRB、ニューヨーク連銀などの対応を克明に描いた「リーマンショック・コンフィデンシャル」上下巻800ページをやっと読了。ニューヨークタイムズの記者アンドリュー・ロス・ソーキンが大手金融会社のトップや政府関係者にインタビューして書き上げた、リーマンブラザース破たん時の克明な記録。当時の主役たちの実名をあげ、右往左往する様子が描かれます。リーマンショックの発端は低所得者向け住宅ローン(サブ・プライムローン)を証券化し、それをリーマンブラザースほかの金融機関が販売して利益を上げていたものの、もともとリスクの高い商品であったことから、住宅バブルがはじけ、回収不能となり、先ずは住宅金融会社がおかしくなり、これを政府が救済し、次に中規模の投資銀行ベア・スターンズが破たん寸前になったことから政府主導でJPモルガンが救済合併し、更には生保のAIGもおかしくなり、これもまたバンカメと合併させたのですが;唯一リーマンブラザースだけは救済せずに破たんさせたことから、同じような傷を持つ投資銀行のメルリ・リンチ、ゴールドマンサックスまでもが連鎖でおかしくなり、政府はこの時点で大胆な救済基金を法制化して金融危機を収めたという大筋。
とにかく名だたる大手銀行や証券会社(投資銀行)、保険会社、政府機関、個人投資家コンサルタントなど、実名の登場人物が多く、彼らのそれぞれの思惑を懇切丁寧に描いていることから、どことどこがくっついていきそうか、離れていきそうか、政府は何をしようとしているのかなど、克明に描かれているものの、頭の悪い小生にはとてもじゃないが付いていけない部分ばかり。
数年前に税金で救済されたにもかかわらず、銀行の幹部が巨額ボーナスを得ていたことから、アメリカで相当のデモが繰り返されましたが、これは日本では考えられないこと。モラルハザートそのものですが、アメリカの報酬システムが前年の業績によって決まることから、いくら倒産寸前になっても前年に利益が上がっていれば契約上拒否できないシステムとのこと。これもまたおかしな話ですが。
とにかくこの本で描かれているのは、危機に際してCEOにまで上り詰めた人間や政府のトップも、アメリカ金融の複雑なシステムを理解することができず、唯々、金融工学に出来上がったシステムに乗っかているだけの人たちで、リスク管理がなっていないことが鮮明に理解できるという点。
いずれにせよリーマンショックから10年が経過し、アメリカは好景気で株も上がり、銀行業績もいい模様。しかし、これが過去の失敗を織り込んでいる結果なのか否かは誰にもわからないのではないか。バブルは必ずはじけるはず。そういう意味で、トランプの製造業をアメリカに取り戻すという、いわば実業の世界を復帰させることは、アメリカには必要なのではないかと思った次第。
今日はこの辺で。