ドキュメンタリー映画「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」

リーマンショックの背景を記載した「リーマンショック・コンフィデンシャル」を昨年呼んだのですが、同じくリーマンショックがどのようにして発生したのかを映像で追ったアメリカのドキュメンタリー映画インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」をNetflixにて視聴。本は800ページの大作で、アメリカの当時の金融関係者や政府の対応などをかなり詳細に描き、金が金を作っていく金融工学の恐ろしさや企業トップなどの強欲さに怒りを覚えた記憶がありますが、本ドキュメンタリーは、映像で描くだけあってインパクトもより大きいものでした。本作で2010年のアケデミー賞長編ドキュメンタリー賞を獲得しています。ちなみにナレーションをマット・ディモンが担当ししています。

映画は5部構成で、2008年9月のリーマンブラザース破綻までのアメリカ金融界の状況と、それを作り出した金融界や学者、政府関係者、追及した人たちのインタビューが中心で、最も怒りを覚えたのは、やはりサブプライム・ローンを作り上げて巨万の報酬を受け、リーマンショックで金融大手が税金で支援されたのも関わらず、誰一人として責任を取らず、あるものは逃げ勝ち、あるものはショック後も企業幹部や政権幹部の一員となり、高額報酬を受け続けるという理不尽。ニューヨークではその後長期にわたって関係者を非難するデモが続きましたが、庶民はとてもじゃないがやりきれない思いでしょう。

現在のパンデミックは、リーマン以上の経済的打撃を全世界に与えていますが、リーマンショックも当時は100年に一度の経済危機と言われました。しかし、2020年の今日、コロナショック前までのアメリカは空前の好景気と言われていました。金融界の幹部の報酬もリーマン前の水準に戻ったともいわれるほど。アメリカの底力とも言えますが、確実に格差は広がっております。さらにはリーマン後の変化としては、GAFAと言われるITプラットフォーマーが経済のけん引役となったこと。映画の中でも言われていますが、金融工学によってつくられた虚業に対して、ITは創造を伴うもので、実業の世界。そういう意味では金融工学が作り上げたデリバティブのような虚業ではないところには納得するところ。トランプ政権以降、株価が上昇し、アメリカ経済のバブル感が心配でしたが、コロナショックでそのバブルが消えた分だけ良かったのかもしれませんが、ただしアメリカ経済にはどこに落とし穴があるかわからないので心配は心配です。

しかし、アメリカの財務省トップには大手金融のトップを務めた人間が就くケースが多く、リーマンショック時のポールソンもゴールドマンサックスのCEOを直前まで務めていた人。利益相反的な行動が心配されないのか。現にリーマンショック時の対応も右往左往で信頼感が置けない態度に見受けられました。自由で民主主義的な国のお手本とは言えないのが今のアメリカの制度ではないかと思った次第。

今日はこの辺で。