江上剛の銀行小説「起死回生」を読み終えました。この作品が書かれたのが平成14~15年ごろ。丁度小泉政権が不良債権問題の処理を最重要課題として掲げ、竹中平蔵が金融担当大臣として取り組んでいた時期でしょうか。従って、日本経済がどん底の頃でもありました。
都市銀行は不良債権処理を迫られ、大銀行同士が合併をしたり、弱体化した銀行は政府の資本注入を受けるなどの荒療治がなされた時期でもあります。もう遠い昔のようにも感じますが、実はまだ4年前の話です。
バブル期に拡大した資産インフレは、結局何の収益根拠も無かったことからあっという間にはじけ、その後の失われた10年が長く続きました。しかし、その間も日本経済はバブルの後遺症から完全に立ち直ることが出来ず、小泉政権の荒療治を受けることになりました。
この失われた10年に、銀行内部では想像を絶する様なことが起きたことが想像されます。この小説にある頭取をはじめとした経営者の不祥事は、決して大げさと言えるものではないのではないでしょうか。
よく銀行は晴の日には傘を貸すが、雨の日には貸さないと言われます。貸し渋り、貸し剥がしが横行した時代でもありました。
さて、今は良くなったのでしょうか?確かに一部銀行は収益改善し、史上空前の利益を出してはいますが、この小説にあるような中小企業の再生に積極的に関わっている実態はあるのでしょうか?
サブプライムローン関連の損失が1000億円単位で発生しているような状況を見ると、どうも企業の再生に力を入れているようには見えないのですが。
今日はこの辺で。