横山秀夫「震度0」読了

久しぶりに横山秀夫作品、「震度0」を読みました。400ページはあっという間に過ぎてしまったと言う感じで、さすがに読ませてくれます。最初は阪神淡路大震災に関わる警察内部のどたばたを描いているのかと思っていましたが、さにあらず。神戸とは700kmも離れた県警本部のお話。本部長以下県警本部の幹部の人間模様が時間と場所と主人公を替えながら進行していきます。そこにあるのは自分のエゴ、保身、出世、天下りなど、およそ警察あるいは警察官の本来あるべき姿からかなり逸脱した姿が描かれています。勿論フィクションですからエンタテイメント性が多く含まれますが、役所の体質をよく表しているのではないでしょうか。
横山作品の警察ものは、ほとんどがこうした内部のどろどろとした人間模様を描いているのですが、彼がかつて警察官であったかのようなリアリティがあります。上毛新聞の記者だったよいうことで、警察事情にも詳しいのでしょうが、本当にここに描かれた姿が警察の真実であったなら、空恐ろしくなります。
しかし、残念ながらそれを全否定できることはできません。むしろ真実に近いと言って方がいいでしょう。最近明るみになる警察の不祥事、すなわち裏金隠しや不法逮捕、冤罪事件、捜査不足、キャリアとノンキャリアの確執などなど、泥臭い事件が後を絶ちません。
それにしても、「本部長になったら食事とトイレに行く以外、自分ですることは何もない」といった体質があるとすれば、本部長はただの飾り物で、何ら必要のない存在なのではないでしょうか。正に税金の無駄遣い以外のなにものでもありません。どうかそんなことがないように。
今日はこの辺で。