古川利明「日本の裏金【下】」

毎日新聞東京新聞で社会部記者を務め、現在はフリージャーナリストの古川利明氏著「日本の裏金【下】」読了。上巻は首相官邸と外務省の裏金を扱い、下巻では検察と警察の裏金について記しています。

検察編は、実名で検察の裏金作りの実態を告発しようとした直前で逮捕された、大阪高検公安部長であった三井環氏の例を中心に、いかに検察が検事正・検事長検事総長が使う裏金を作ってきたかを詳述しています。

検察の裏金作りは、調査活動費といわれる、本来は情報提供者に謝礼として支払われるお金を払ったように見せかけて、その金をプールするシステム。ピークの1998年には5.5億円あったものが、2003年には0.78億円まで減少しています。最近の動向は不明ですが、三井氏などの告発の影響で少なくなっていることは確か。ただし、空出張などで今でも作られている可能性はあります。検事は普通の公務員に比べて相当給与も多いはずですが、トップに立つとお金が余計に欲しくなるのか。

恐ろしいのは、三井氏だけでなく、告発したことがある副検事検察事務官も、微罪で逮捕され、三井氏含め全員が有罪判決を受けていること。検察は、いざとなったら組織を守るために、罪をでっちあげでまで、捜査・公訴権限をなりふり構わず使い、裁判所も簡単に有罪にしてしまうという行為には驚きます。検察は、こういう時にはメディアに間違った情報をどんどんリークし、メディアはそれに乗っかって、「検察関係者にもかかわらずもってのほか」と正義を振りかざすパターンは、情けないの一言です。

次に警察はどうか。こちらも検察と全く同じシステム。罪を犯した人間を捕まえる組織にもかかわらず、自分も同じことをしているのに恥じないのか。

私はかつて警備会社にいたことがありますが、警備会社の管轄は警察。たまに警察の方に講演などをしてもらうことがありましたが、謝礼を受け取るのは当たり前。盆暮のビール券や異動時の餞別なども平気でもらうなど、あっけらかんとした組織ではあります。

エピソードがいくつか書いてありますが、かつて新潟で少女を十数年監禁していた男が逮捕される事件がありましたが、その時に新潟県警本部長が警察庁の監察官を温泉で接待していた事象がありました。両名ともキャリア警察官で、監察とは名ばかり。慣例としてどこの警察本部でも同じことが行われているのでしょうが、たまたま運が悪かったというか、接待していた事実が明らかになってしまいました。その際の温泉の接待・宿泊費を、彼らは私費で賄ったといったとのことですが、そんなはずはなく、それもやはり裏金から支出したのでしょう。両名とも依願退職せざるを得ないこととなりました。

新聞社もたびたび告発してきました。とくに有名なのが北海道新聞。警察の裏金作りを克明に記事にして、2004年度の新聞協会賞も受賞した。この記事時により、北海道警は裏金の不正使用を認め、数億円を関与したOBを含む警察官が返還する事態となった。

しかし、北海道新聞は報復として社内の不祥事を暴かれ、しっぺ返しを受けたり、警察情報から遮断されることになる。警察もまた検察と同じく捜査という強い権力でメディアを震え上がらせることから、なかなか大手メディアは書こうとしないのが実態であり、残念なことである。

今日はこの辺で。