小野義雄「日本警察が潰れた日」

産経新聞警察庁担当記者を務めていた小野義雄氏が、平成11年から12年にかけて発生した警察不祥事事件で、警察が揺れに揺れて国民からの信頼を失墜させた時期を描いたノンフィクション」日本警察が潰れた日」読了。

平成11年には神奈川県警で数件の警察官の不祥事事件が発生し、神奈川県警本部長が刑事訴追され、大きな問題となります。そしてその騒ぎがまだ収まらない中、9年前に発生した新潟少女誘拐・監禁事件が解決されるという、正にこれまた「事件」が起こる。本来であれば、事件解決は警察にとって何より喜ばしいことではあるのですが、その解決の過程で、いくつもの警察の失態が明らかになっていく。まず、犯人が10年前にも同じような誘拐未遂事件を起こしたにもかかわらず、当時の柏崎警察署がその事件データを残していなかったことが明らかになったこと。そのデータがあれば9年前に事件が解決していた可能性が大きかったはずでした。次の失態は、実際は保健所が少女を発見したにもかかわらず、警察が発見したと偽った会見を開いたこと。更にその前に保健所からの電話で、暴れている犯人がいるという保健所員からの通報に対して、動かなかったこと。そして最悪は、関東管区監察局長の監察が偶然にも実施されていた当日で、県警本部長と局長が雪見酒とマージャンにいそしんでいたことが発覚したこと。そして、両名の懲戒処分が甘かったことから、国民の批判が沸き上がってしまい、正に警察が潰れんばかりの危機に陥ったことです。

リスク管理のリの字もない警察という組織の悪弊がすべて露出してしまった事件でした。

この事件が収まらない中発生したのが、桶川ストーカー殺人事件。これもまた、新潟の事件と同じように、被害者親子から再三再四要請があったにもかかわらず、上尾警察が捜査もせず、書類も改ざんしていた事実が、被害者が殺されてから続々と出てきたことです。この三県警の不祥事が連続して発生したことから、警察刷新会議が設けられ、警察の自浄作用が図られたことが最後に書かれていますが、実際には自浄作用は今もって効果を上げていないように感じます。

著者は産経新聞の元記者であり、いわゆる記者クラブ内に属して、歴代警察庁長官と親しかったような書きっぷりから、かなり警察よりの筆致に見受けられ、その辺は気に入りませんでしたが、それは別にして、警察組織の隠ぺい体質には十分納得しました。

今日はこの辺で。