伊兼源太郎「ぼくらはアン」

伊兼源太郎が、無戸籍にならざるを得なかった双子の男女きょうだいと、日本国籍のないタイ人少女マヨンチット、そして疎外感を持つやくざの子供である誠の4人を主人公に、彼らの子供時代と、成人して彼らの不幸の下を立つ3日間を描いた「ぼくらはアン」読了。

諒佑・美子きょうだいは、母親がDVを受けた後に家を出た後に双子を出産。身元を知られないために出生届を出さず、無戸籍となる。その二人の前にタイ人きょうだいと出会い、更にじいちゃんと呼ばれる老人に出会い、無戸籍、無国籍ながら、母親とじいちゃんの下、すくすくと成長していく。これが第一部の1994年~2008年の出来事。この間、悪役の仕業で母親とじいちゃんが亡くなるが、強い結束力で4人は成人していく。

第二章・第三章は2019年12月22日~25日では、4人がDV父親である元警察官僚と誠の父親との戦いが描かれる。二人とも戦時中の隠退蔵物資の在処を狙って誠と諒佑を追い詰めるが、間一髪洞窟内での戦いに決着をつける。しかし、誠は残念ながらその戦いの中で命を落とすことになる。エピローグでは、諒佑が誠の戸籍を引継ぎ、マヨンチットと結婚し、美子は無戸籍のまま有名画家を目指すという、一応のハッピーエンド。

エピソードはたくさん盛り込まれ、特に子供時代の話はスリリングで、話に引き込まれますが、やはり推理小説の結末は予定調和的でいまいち。

本作では、戸籍の取得の煩雑さ、自治体の無責任さが強調されて描かれますが、マイナンバーができた今日、戸籍の必要性も議論すべきでしょう。

今日はこの辺で。