伊岡瞬「代償」

伊岡瞬氏の2014年書下ろし作品「代償」読了。

生まれついての悪人、更生しようのない悪人という人が世の中にはいるということを昔何かで読んだことがありますが、本作はそんな悪人と出会ってしまった少年、後に弁護士となる奥山啓輔を主人公に、達也という遠い親戚筋の同年齢の男との不運な出会い、達也が仕組んだ悪だくみによって両親を失い、啓輔が達也と同居せざるを得ない状況に追い込まれ、達也の義母からも仕打ちを受けながら苦痛の日々を過ごすことになる3年間を第一章で描き、第二章では善意の人間との出会いから苦痛の生活を抜け出し、弁護士となって再び達也の悪と戦うことになる姿を描く。

達也は自分の手を汚さない形で犯罪行為を繰り返し、弁護士というステータスを得た啓輔を追い落とす算段を企む。その為に、強盗致死事件の犯人として捕まり、啓輔を弁護人に指定し、弁護士資格を失わせるような悪だくみを仕組む。啓輔はその悪だくみにまんまとはまり、危うい状況に追い込まれるが、小学生時代からの親友である諸田寿人の強力なバックアップを得て、達也の犯罪の全貌を暴いていく。後半は寿人が名探偵宜しく、啓輔よりも重要な役割を担うことになる。

本作は第一章でぐいぐい読者を引き込み、第二章の中盤までは申し分ない展開だが、終盤にかけての謎解き部分は、前半の期待感を完全満足させるものではない。推理小説の終盤の組み立ての難しさを、読者としてつくづく感じるところである。それでも、一気読みさせてくれる魅力ある作品には違いなく、伊岡ワールド全開のミステリーでありました。

今日はこの辺で。