大塚将司「日経新聞の黒い霧」

日経新聞の記者であった大塚将司が、日経新聞の現役社員中に、当時の社長であった鶴田卓彦氏の取締役解任を株主総会で求めた話を中心にして、日経新聞が報道機関として如何に堕落しているかを赤裸々に描いた作品「日経新聞の黒い霧」読了。

現役社員が現役の社長を追い詰めるなど、全く想像もつかない自称でありますが、それをやってのけるという大塚氏の度胸と言うか、ジャーナリストの矜持と言うか、いずれにせよ簡単にできるものではありませんが、それをやってのけたことには深く敬意を表す次第。

鶴田卓彦社長が如何に会社を私物化し、それを役員や幹部社員などの取り巻きが、今の安倍首相をよいしょする周りの側近と言われる政治家や役人たちと同じように言いなりになってよいしょする体質が描かれ、日経新聞はもはや報道機関ではなくて、情報サービス機関に成り下がっていると断じます。

日刊新聞を発行する新聞社は、日刊新聞紙法と言う法律によって、株式の譲渡宣言があります。すなわち、

・株式の譲受人はその会社の事業に関係のある者に限る
・株主がその会社の事業に関係のない者となった場合、事業に関係のある者に株券を譲渡しなければならない

その理由は、もし新聞社の株主が自由に売買できてしまうと、株式会社は株主の利益を追求するため報道が捻じ曲げられる可能性があるからと言うことです。

一理納得することもありますが、逆に株主が社員やOB社員、社主などに限定され、どうしても社内権力者が独裁化しかねないという欠点もあります。オーナー社主がいれば、オーナーに気を使うこともあるでしょうが、それもだんだん希薄化し、時の権力者=社長などがやりたい放題が可能になります。鶴田氏は社長を10年間勤め、その間毎年5千万円もの金を1軒のクラブで使い、隠し子の疑惑まであったと頃まで大塚氏は調査します。さらには子会社の不祥事にも関係しているのではないか、あるいは知っていて隠ぺいしたのではないかなど、疑惑の塊の鶴田社長追い落としに奔走します。勿論会社は懲戒解雇され、厳しい戦いだったものの、鶴田社長辞任に導きます。

さて、この鶴田氏のスキャンダルはかなり週刊誌でも取り上げられたようですが、後に彼は横綱審議委員会の委員長を務めており、更に勲一等旭日大綬章まで受けています。

確かに株主総会でも解任決議は否決され、隠し子問題もDNA官邸で否認されましたが、これだけ会社を私物化した人が、世間で言う名誉を授かるというのもおかしなもの。誰が選ぶか知りませんが、随分おおらかと言うか、頓珍漢な話です。

今日はこの辺で。