有森隆「巨大倒産」

経済ジャーナリストの有森隆著「巨大倒産 絶対潰れない会社を潰した社長たち」読了。

世に大企業と呼ばれる企業はたくさんあるが、いかに大きな企業でも、経営のかじ取りをする社長の役割は極めて重い。そんな社長の経営手腕によって、大企業が倒産する姿がままみられるのであるが、本書はそうした社長のとった行動や意思決定によって倒産に追い込まれた9社を取り上げ、どういった経緯で倒産したのかを興味深く分析したノンフィクション。

取り上げられているのは、車のエアバックのトップメーカーのタカタ、大昭和製紙、造船メーカーの佐世保重工業、ブレハブ住宅のミサワホーム、百貨店のそごう、商社の安宅産業、流通のセゾングループ、船会社の三光汽船、そして最後にシャープ。

確かに倒産の理由が全て企業トップの経営判断の誤りにあるわけではないのだが、やはり決定的に影響するのが経営ミス。昨今ではコンプライアンスがうるさいなか、経営ミスだけではなく、トラブルの事後対応などで失敗するケースも多いが、やはり倒産は社員や関連企業の社員の生活を脅かす事態であるので、社長の重責は極めて重い。

タカタはリコール隠しと事後対応のミス、大昭和製紙は企業の私物化、佐世保重工業は、坪内氏に責任を押し付けるのはかわいそうながら、独裁が招いた結果、ミサワホームは、社長に物言う大番頭がいなくなったこと、そごうはイケイケどんどんの出店の結果、安宅産業は創業家の公私混同、セゾンは父親のカリスマ性との齟齬、三光汽船は、これまたイケイケ戦略と金融の絡み、シャープはオンリーワン戦略の誤り。

経営派がいかに難しいかがよく理解できる著作でした。

なお、本書の中でも何回か登場する児玉誉士夫が、企業間の争いごとの調停役として暗躍していたことが語られています。現代ではコンプライアンスに引っ掛かり、ばれたら大変なことになるのでしょうが、戦後社会の違った暗部として印象深く読ませてもらいました。

今日はこの辺で。