辻村深月「ロードムービー」

辻村深月さんは、今最も売れっ子の女性作家ではないでしょうか。2012年、32歳の時に「鍵のない夢を見る」で早々と直木賞を受賞。その後も話題作を発表していますが、そのペースは全く衰えていません。本書「ロードムービー」もなかなか読ませる3篇の短編集。

表題作「ロードムービー」は、小学5年生のトシが主人公。トシは父親が政治家、母親が医者で本人も成績優秀な児童。同じクラスにワタルがいて、ワタルはクラスの女王を気取るような女の子の集団にいじめにあっていたので、トシはワタルと仲良くなり助けることに。そしたら今度はトシがいじめの標的に。辻村さんの意地悪なところは、トシを男子と思わせているところ。確かに女子が男子をいじめの対象にすることは不自然ではあるのですが、それでも騙されました。トシは実は女子児童でした。慧恵さんという名前が出てきて初めて気づきました。ロードムービーという標題は、ある事情でトシがワタルを連れて家出して遠いところに行く姿を描いているから。何とも心温まる物語でした。

「道の先」は男子大学生の塾講師が、生徒の女子中学生から好意を寄せられる話。家はお金持ちで成績もよく、活発な中学生ですが、実は両親の離婚問題ですごく敏感になっていたことが次第にわかります。「トーキョー語り」は、体調が悪く不登校気味な男子小学生のところに通ってくるミーちゃんという女の子。男子児童はうっとうしくてついついきつい言葉で「もう消えちゃえ」と言ってしまう。実際にミーちゃんはいなくなってしまう。男子児童は必死に探すことになる。何とけなげな女の子でしょう。

今日はこの辺で。