浅田次郎「おもかげ」

久しぶりに浅田次郎作品「おもかげ」読了。一流商社に勤め役員になれなかったものの、子会社の役員を務めて65歳で引退した竹脇正一が、送別会の日に病に倒れ、意識をなくす。そんな彼を見舞いに来た商社の社長の、彼への思いから話が始まる。いかにも浅田次郎らしい、今後の展開に期待を持たせるプロローグ。ところがそこから、病に倒れ意識のない竹脇が不思議な女性たちと交流する話になり、若干拍子抜けの感あり。80歳にもなる品のあるマダム・ネージュ、同じく65歳の品のいい静さん。そしてもっとずっと若い峰子さん。この三人の幻想のような女性に、彼の奥さんと娘さん、娘さんの旦那さん、病院の隣のベットにいるかっちゃんなどが出演してくる。出演者のほとんどが不幸な生い立ち大人になった人たちでが、最終盤になって3人の女性が彼の母親であることがわかる。彼は終戦間もないころに捨て子され、施設で育った過去を持つのですが、捨て子せざるを得なかった母親の当時の生活環境や思いが最後にかたられて、話としては盛り上がりました。もう一度読めばさらに感動する話なのでしょうが、それは時を置いて挑戦しましょう。
今日はこの辺で。