浅田次郎「終わらざる夏」

浅田次郎の長編大作「終わらざる夏」をやっと読み終わる。上下巻全900ページの大作で、上巻を呼んでから間をおいて下巻を読むという変則読書。かつては日本の領土であった千島列島の最北端、占守島終戦時まで精鋭部隊を確保していた日本軍が、8月15日の終戦以降にソ連軍の攻撃を受けるまでの経緯を、たくさんの登場人物の生き様を交えながら多彩に描きます。浅田次郎の戦争ものは確か始めて読みますが、渾身の精力を傾けた作品であることが読んでいて伝わってきます。
出版社に勤める英語の達者な45歳のロートルが召集されることがあったのかは分かりませんが、小説では片岡というそのロートルが召集され占守島に送られます。一緒に送られたのが若い医師と鬼熊と呼ばれる歴戦の戦士。彼らがついた占守島には驚くべき戦車隊を有する軍隊が存在し、敵が来るのを待機していたのでありますが、結局終戦。しかし、中立条約を破って攻めてきたのはソ連の軍隊。そのソ連の軍隊の側の人間模様も描かれています。入念な調査に基づく小説なのでしょうが、とにかく長いのが弱点。浅田次郎らしく、もっと凝縮した内容に出来なかったのか?それが悔やまれますが、彼の代表作にはなるでしょう。
今日はこの辺で。