柚木裕子「あしたの君へ」、東野圭吾「人魚の眠る家」

最近めっきり本を読まなくなってしまった。図書館に行って物色し、借りてくるものの、読まないで返すケースが多い。年を取ったせいか、集中して読めなくなっている傾向があります。読むのは小説なのですが、最初はどの本もストーリーがわからないので、読みにくいものですが、それを超えてしまえば、だんだんストーリーも読めてきて、すいすい言ったのですが、最近はその峠を越えることがままならないのが現実。まったく情けないしだい。
そんなわけで、作者を探してなんとか2冊読み終えました。
一冊目は、柚木裕子「明日の君へ」。家庭裁判所の調査官という職業があることも知りませんでしたが、この作品は、その調査官補を主人公とした短編連作。家裁調査官は、少年事件や夫婦問題などの背景を調査する役職。主人公は家裁調査官に採用され、2年間の養成課程研修の一環としてとある町の家裁で数々の事件に遭遇し、成長していくお話。実際の調査官の仕事がどんなものかは知りませんが、小説ではこの調査官の役割が非常に大きなインパクトを持っています。見習いでもある主人公は、自分が調査官に向いていないと思う場面がたくさん出てきますが、それにしては真相をつかんでいるところに、フィクション性を感じました。
東野圭吾人魚の眠る家」は、プールの事故で脳死状態となった娘を、機械を使って動かして、生存させようとする親の物語。日本でも脳死による臓器移植が遅ればせながら増えつつあるようですが、実際に脳死判定された親の苦悩と、その後のフィクションである機械の進歩により体が動き、成長するという過程を通して、脳死と移植について考えさせる大きな東野のテーマが語られます。機械によって生かされ、動かされる少女は、ただただ眠るだけで、意識はありませんが、母親はそれでも必死に娘は生きていると思い込もうとします。しかし、周りから見れば人間ロボットのようなもので、薄気味悪い存在でもあります。脳死がなかなか定着しない日本の現状を東野は訴えたかったのかどうかわかりませんが、東野らしい読みやすさは健在。
この2冊をきっかけに、また読書を楽しみたいと思います。
今日はこの辺で。