浅田次郎「ハッピーリタイアメント」

久々の浅田次郎作品「ハッピーリタイアメント」読了。
役所からの天下りは諸悪の根源のごとく、事業仕分けでも厳しく追求されているところでありますが、本作品は、その天下りをちくった痛快作。
全国中小企業振興会、通称「JAMS」という、いかにもありそうな天下り団体に天下った財務省防衛省ノンキャリアが、何も仕事がないにもかかわらず、豪華な執務室と報酬を与えられる。そこでは、仕事をすること自体がご法度。全員が何もすることなく、キャリアの天下り理事を頭に、秩序を保っているのであるが、新任の二人はそんな命令に反発して、仕事をしてしまう。そして、なんと未回収の債権を何件か回収し、3.5億円を得る。理事の女性秘書と3人で山分けして、ハワイへハッピーリタイアメント。
事業仕分けでも話題になりましたが、何人も職員がいないのに、都心の一等地に広々としたオフィスをかり、その言い訳は「会議に必要だから」。大した仕事もしていないのに、そんなに会議があるのか?全国から集まる社員の会議が年に何回あるのか?兎に角役人にコスト意識にはあきれるばかりですが、この小説でも、見かけは古く、役所が入っているようには見えない建物ながら、中に入ると豪華な調度もある立派な役所、というよりも社員倶楽部。極めて巧妙に実態を隠す天下り団体ならではの実態を浅田が切り込んでいます。
多少の誇張はあるでしょうが、現実に近いのではないか、と思ってしまうほど、今の天下り団体は怪しいと思うのは、私だけではないでしょう。
ところで、完全に小沢の子分に成り下がった民主党の原口前総務大臣等が事業仕分けを批判していました。勿論、当初の期待通りにはお金も捻出できず、苦戦はしていますが、原口たちが言う批判には納得がいかない。他に無駄な事業を見極める手立てがあるのか?その手立てを示してから批判してほしいものです。
今日はこの辺で。