魚住昭「野中広務 差別と権力」

菅直人内閣が発足し、各社の世論調査で支持率が大幅に回復し、国民新党を振り切って、国会会期を延長せず、7月11日参院選投票が確定しました。支持率を見ながらの選挙戦突入。ついこの間まで自民党が表紙を変えて選挙戦に備えようとした戦術が、民主党でも取られる現実。でもこれだけは誰も非難できないでしょう。選挙に勝たなければ政権運営が厳しいのですから。
さて、小泉政権誕生以前に権勢を振るった野中広務の、権力への階段を描いたノンフィクション「野中広務 差別と権力」読了。
野中は被差別部落出身という社会的なハンディキャップを背負いながら、持ち前の行動力と人脈で、橋本内閣、小渕内閣森内閣官房長官、幹事長まで上り詰め、影の総理大臣とも言われました。森内閣崩壊後は自ら総裁選に出るチャンスがありながら辞退し、結局小泉政権誕生後は引退を余儀なくされました。
野中が国政にデビューしたのは50歳を過ぎたからで、常識的には幹事長まで上り詰めることは考えにくいのですが、この著書を読むと、ずば抜けた行動力と人脈作りに圧倒されます。そして、被差別部落出身という立場をもいかして、弱者への心配りも人一倍に感じられます。私は、小渕総理が病に倒れたとき、いわゆる5人組で後継総裁森芳朗を密室で選んだ悪役イメージしかありませんでしたが、これを読むと、彼が権力を得たことの必然性が垣間見えます。
いい悪いは別にして、政治家としてのバイタリティーが並外れに大きく、気配りもまた大変なものであったことが読み取れる作品でした。
今日はこの辺で。