ノンフィクションライター森功著「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」読了。
「官邸官僚」という言葉自体、以前は耳にしなかったが、第二次安倍内閣になってから、盛んに聞くようになった。簡単に言えば、首相側近の官僚ということなのですが、これまで官邸官僚が力を持つようになった背景は何なのか?一言でいえば、安倍一強により、官邸にたてつくものがいなくなり、安倍の側近もまた、ボスの威を借りてやりたい放題しているということなのでしょう。
官邸官僚が良心的な人間ばかりで、日本国民の幸福をより高めてくれるような政策をとってくれるなら、何ら文句を言う筋合いはありませんが、貧困・格差拡大、老後不安など、決していい方向に向かっているとは言えない現在の日本人の生活を考えると、決していい政治が行われているとは思えません。
コロナ禍で浮かび上がった最側近である今井尚哉をはじめとする経産官僚のお粗末さ。コネクティングルームで話題になった和泉洋人が参考人招致で前川喜平氏の主張に対して言い訳じみた嘘を並べた狡猾さなど、ろくな人間がいないのがあからさまに分かります。
内閣人事局による官僚人事の掌握は、あからさまな贔屓が忖度を助長するといわれますが、いつまでこんな状態が続くのか。
本書では、安倍内閣で問題になったモリ・カケ・日報・統計不正(本書の出版時には、まだサクラや学術会議は表に出ていない)などの不祥事のほか、官邸官僚の出しゃばりによる外交の停滞、検察の忖度などが取り上げられ、いかに安倍・菅体制が弊害を生み出しているかを暗に批判しています。
森功氏が鋭いのは、菅官房長官が安倍政権を支えたからこそ、長期政権になったということをはっきり書いていること。つまり、安倍政権の不祥事はすべて菅が知っており、処理してきたということが分かります。その菅が今、首相となっている事実は、日本にとって最も不幸なことではないか。菅は内閣人事局による人事支配によって、官僚を好きなように使うことで、権力を強化するすべを最も知悉している人間。菅の下で、杉田官房副長官、和泉洋人秘書官が今後も権勢をふるう最低の展開が続きます。
本書とは関係ありませんが、菅は内閣官房機密費を官房長官在任中に80億円以上自身の判断で使っていたとのこと。年に10億円、一日300万円もの金を使っていたことになります。昨日の参議院予算委員会で共産党の小池氏が質問していましたが、学術会議の10億円を言うのなら、80億円の中身を公表せよと言いたいものです。一説には河井杏里氏の選挙資金に使われたという疑惑もある中、菅という人間の恐ろしさを改めて実感しました。
今日はこの辺で。