重松清「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の旅」

重松清「永遠を旅する者・・・」読み終えました。この小説はテレビゲーム「ロストオデッセイ」用に作られたお話とのこと。私はテレビゲームには全く関心がないため、そのゲームがどんなものなのかわかりませんが、普通の短編・連作小説としても十分に楽しめる作品です。千年を生きる不死身の主人公カイムが生と死、戦争についてさまざまな人との出会いを通して描いていますが、底辺に流れるのは人間の優しさと反戦思想。
カイム自身が傭兵であり、たくさんの人の命を奪い、仲間を失うという設定には疑問が残ります(反戦を歌い上げながら、自らも戦争要員たるところ)が、ゲームの構成上やむをえないところか。
死ぬことが適わないがゆえに、たくさんの悲しい死と出会わなければならないカイムの苦しみ、そして繰り返される戦争を止めることができない苦しみ。この小説に出てくる、カイムの出会う人たちの悲しみや苦しみ、そして時には喜びを、重松独特の人間愛で描いています。
やはり感動するのは、勇敢な人間たちにもたらされる平和の礎です。「はずれくじ」と「語り部サミィ」はその代表格。他の短編もいずれ劣らず珠玉の作品。重松の才能に感服する次第です。
今日はこの辺で。