重松清「旧友再会」

久しぶりの重松清の著作「旧友再会」読了。重松清特有の語り口はここでも健在。

本作は、表題作を含む短編5作で構成され、いずれも重松節ともいうべき家族や友人関係が語られます。

「あの年の秋」の舞台は1970年代初め。日中国交回復とパンダ騒動、横井正一さんや小野田寛夫の南方戦地からの帰還など、時代背景を題材にして、ある意味懐かしい思いを抱きました。話の骨子は、認知症初期の母親を半年ほど預かることになった家族を中心に、三世代家族、介護問題等、家族愛が語られます。

表題作「旧友再会」は、地方で小さなタクシー会社を経営する男がタクシー運転中、小中学生時代の同級生で、都会に住む男が客となり、車中の会話を中心に話が進む。運転する男は煩わしく思うのだが、次第に理解するようになる。

「ホームにて」は、鉄道会社系の不動産会社に勤めた父親は定年退職して、駅のそば店に勤めることに。その裏には父親の深い思いがあった。ホロっとする話でした。

「どしゃぶり」は、かつて中学の野球部に所属した中年の旧友三人が集まり、一人が中学校の臨時の野球部監督になり、生徒からの不満を受ける。三人はそれぞれの生活や家族で悩みを抱えながら、野球の結果に話が集約していく。

「ある帰郷」は15頁の小編ながら、妻と離婚する男が子供を男の実家の父母に逢いに行くなかで、父母、息子、子供の心の機微を重松らしい語り口で描きます。

重松清らしい短編小説でありました。

今日はこの辺で。