凪良ゆう「流浪の月」

今最も若者に読まれている作家は誰か?と聞かれれば、その名前が必ず出てくるであろう凪良ゆうさん。ボーイズラブ作品が多いとのことですが、本作「流浪の月」は本屋大賞を獲得した作品で、直近の本屋大賞でも「汝、星のごとき」で獲得している、書店員さんに支持されている小説家。

「流浪の月」は昨年、広瀬すずと松坂桃季の主演で映画化もされ、映画を先行して観ていたのですが、原作本は初めて。おまけに凪良ゆう作品も今回が初めてとなりました。

主人公の家内更紗は、自由奔放な両親のもとで幸せな生活を送っていたが、9歳の時父親が亡くなり、母親は更紗を置いて家を出て行ってしまったため、叔母の家に引き取られ、そこの中2の息子に性的虐待を受けたことから居場所がなくなり、公園のベンチで寂しく本を読んでいた。そこへいつも公園のベンチで少女たちを眺めていた佐伯文という19歳の大学生から声をかけられ、文の家についていく。文は何かすることなく優しく更紗に接し、更紗はここにいさせてほしいと頼み、史の家が居場所となる。しかし、当然に小学生がいなくなったことから誘拐事件報道が広がり、二人が動物園に行ったときに見つかり、更紗は保護され、文は誘拐犯として逮捕される。この時、文からは何もされていないと主張するが、叔母の家で虐待を受けたことは話すことができず、更紗は深い後悔をその後味わうことになる。更紗はその後の9年間は養護施設で過ごし、高卒後は自立した生活を送るが、過去の事件のトラウマからは抜けられず、文のことを忘れられない。更紗は亮という男と暮らすことになるが、結婚には踏み切れず、更には亮からDVを受けることに。更紗はファミレスでアルバイトをしているが、ある時深夜喫茶に誘われ、その主人が文と気づく。亮のDVを受け居場所がなくなった更紗は、再び文の喫茶店に居場所を求め、文は受け入れてくれる。ただ、文にも恋人がいるとわかり、亮の元に戻るが、亮からのDVはおさまらず、更紗はやっと亮の元を離れ、文の住むマンションの隣の部屋に引っ越す。しかし、亮の嫌がらせは続き、二人の関係が週刊誌に掲載され、二人の居場所はなくなるのだ。

文は、裕福な家庭に育ったが、自分の成長とともに、自分の男性としての身体に異変を覚え、そのコンプレックスが次第に大きくなる。成人女性に興味がわくことがなく、少女の姿を見ると心が落ち着くのだが、小児性愛でもない。更紗を誘拐した訳ではないが、結果的に警察に捕まることは承知で暮らしていたことも語られる。一度事件を起こした過去は消えず、文は加害者として、更紗は被害者として人生の汚点のように付きまとう。

終章で二人は長崎で喫茶店を開いているのだが、その前の数年間も何度も引っ越しを余儀なくされてきた。また噂が立って引っ越さなければならない運命を二人は背負っていくことの覚悟ができているのでした。

エンタメとして大変面白い作品で、凪良さんの作品にはまりそうです。

今日はこの辺で。