道尾秀介「光」

道尾秀介が小学生の冒険の思い出を描いた「光」読了。全7章からなる連作構成。登場人物は小学4年生の利一、慎司、清孝、宏樹、6年生で慎司の姉の悦子、途中から登場する3年生の劉生。それに清孝の祖母のキュウリー夫人と叔父のガニーさん。私=利一が語りてのなる作品。

第一章「夏の光」は、両親がおらず祖母と暮らす清孝の境遇が貧しいことから、宏樹が清孝を貶めようと、みんなで可愛がっている野良犬のワンダを清孝が殺したと言い出す。祖母がワンダと大げんかし、証拠の写真もあると言う。しかし実際には祖母に自宅から花火を見せたくて、清孝が邪魔な木の枝をたたき切っていたことが判明。清孝の祖母思いが描かれる。

第二章「女恋湖の人魚」は。授業の自習中に教頭先生が突然、町にある湖「女恋湖」の言い伝えについて話し始める。話の中で湖には大きな鯉が住んでいたことを信じた小学生たちが、それを釣り上げようと湖に行き、秘密の洞窟を見つける。中に入ってみると仁吾の首が置いてあり、怖くて飛び出してくる。結局その人魚は人形だったのだが、その言い伝え自身が共闘の昔の作り話だったことが判明。

第三章「ウィ・ワア・アンモナイツ」は、大雨で土砂崩れになったため慎司と悦子が利一の家に暫く居候することに。土砂崩れの現場でガニーさんがアンモナイトの化石を発見し清孝にあげる。利一と慎司は押し入れの中でこっそりアンモナイトの模型を作ってみんなをビックリさせようとする。利一は手先も起用でうまく作ったが、慎司には上出来とは言えないもの。二人の作品を悦子に見せるが、悦子は慎司の方を褒め上げる。悦子にほのかな恋心を抱いていた利一ががっかりして、悦子にあげようとしたアンモナイトのブローチをたたき割ってしまう。利一の切なさが描かれる。

第四章「冬の光」は、清孝の祖母、キュウリー夫人が病気になり、大きな町の病院に転院することに。その為清孝も転校するという。子供たちは、夫人が見たがっていたホタルノヒカリを何とか見せようと思い、幼虫を探し、それを温めて病室を訪れ幼虫を光らせて、夫人を喜ばせる。第五章「アンモナイト・アゲイン」は、新たに小学3年生の劉生が登場。彼はなかなか生意気な3年生で、清孝が転校することを聞いて、友達に送別の贈り物をしないのかと利一たちに迫る。大きなアンモナイトを送れば喜ぶだろうと考え、劉生がデパートの壁や床の大理石にそれがあると助言。みんなでそれをとってこようとする。これはちょっと子供だましすぎる話。案の定警備員に見つかり、たまたま通りかかった担任の先生にも見つかり大目玉。一方、清孝は叔父と住むとのことだが、実は叔父さんはガニーさんで、転校することもなかった。

第六章「夢の入口と監禁」は、清孝が祖母と住んでいた家が空き家になり、利一たち仲間のたまり場に。ある日その空き家にある男が現れワンダにかみつかれ、男はすごい力でワンダを蹴りとばす。その男は建設会社の社長で、事業に行き詰っており、劉生が狂言誘拐を持ち掛けたのだった。劉生の父親は市議会議員で、議員のおかげで森林開発がなくなりそうなため、自分を誘拐して議員を辞職させればいいと持ち掛けたという。ツノダというその男は子供たち全員を湖の洞窟に監禁し、狂言が本物の誘拐となってしまう。

終章は、その洞窟から子供たちが怖い思いをしながら、知恵を絞って脱出する経緯を描写。みんながいくつかの案を出すが、劉生が、各自が自分の将来の夢を語った録音テープが手元にあったことから、真っ暗中、そのテープを流す間に一人ずつ静かに脱出しようというもの。これが実行され、最後の利一がぎりぎり捕まるが、何とかツノダの手から逃れる。外にはワンダが呼んできた夫人とガニーさんがボートでやって来て、景観も着て犯人たちは逮捕。子供たちも無事救出されるのでした。

終章の脱出場面は緊迫感があり、手に汗握る描写が続き、楽しませてくれました。

今日はこの辺で。