白石一文「彼が通る不思議なコースを私も」

白石さんの作品のタイトルは結構長く、内容を予感させるものがあります。本作「彼が通る不思議なコースを私も」もその一つ。

本作の主人公は澤村霧子さんと椿林太郎さん。二人は霧子の女性友だちの恋人が、ビルの屋上から自殺を図る場面で初めて出会い、一週間後の合コンで再会する。霧子は林太郎の教育にかける熱い思いを聞かされ、その不思議な魅力に引き付けられ、林太郎も霧子こそが自分の伴侶になるべきことを直感し、やがて結婚。結婚前に林太郎は小学校の教育方針に絶望し、霧子に相談もなく学校を辞める行為に出て、霧子を惑わせる。林太郎はその後すぐに、自分の教育理念を実現させるための塾を立ち上げ、その事業を拡大していく。一方の霧子は大手家電メーカーに入社して女性常務に目をかけられ、大阪に単身赴任生活。新婚早々の別居生活に霧子は疑問を抱くが、林太郎は霧子にはもっと仕事で頑張ってほしいと諭す。林太郎には不思議な能力、即ち人間の寿命をおおよそ見通せる能力があることを霧子は本人から聞き、今自分が出産した場合には危険があると察していたのだ。霧子はそんな林太郎の不思議な能力を理解し、自分もそのコースに乗っていくことを選択する。

エピソードはたくさんありますが、林太郎と霧子のふたりは、子供たちに「生きる気持ちを持つこと=自分が好きだと思えること」のための塾に人生を奉げていくことになる。

タイトルの通り、ちょっと不思議な作品でもありました。

今日はこの辺で。