小野寺史宜「夜の側に立つ」

小野寺作品四作目は、ちょっとナイーブっぽい男性の約20年間を追った「夜の側に立つ」。

タイトルと内容の関係がいまいちわかりにくいのですが、生真面目な高校生が40歳の中年までに通ってきた人生のトピックを、順不同で並べて描いている変わった作品。

野本了治さんは、高校生時代にギターを習った関係で、高三の文化祭で「野本了治バンド」を他の仲間4人と結成し、彼ら5人が人生の親友になることに。そして野本を中心に、彼ら5人の人生も描かれるという展開。

野本了治さんはロックバンドのギターとボーカル、生徒会長でベース担当の榊信明、副会長でキーボードの萩原昌子、ドラムの辰巳壮介、サックスの小出君香の5人は意気投合してロックバンドを結成、高三の受験前にもかかわらずロックバンドの練習に明け暮れる。そんな彼らたちの18歳、20代、30代、そして40歳までの日々を描く。壮介と君香は行内でも美男美女の代表格で、一時は君香が野本に告白するが、野本が自分には高嶺の花という心境から結ばれることはなく、結局は壮介と君香が結婚。そんな夫婦の間にDVがあることを知り、野本は壮介を許せない感情に襲われ、39歳で五人が集まったときに、壮介の誘いで湖にボートで出たとき、壮介の背中を押そうとしたときに二人は水の中へ。壮介は死亡し、野本と君香が結ばれる余韻を残して物語は終わる。ここにミステリーの要素があり、本作はミステリー小説的な色合いが余韻として残るのだが、全体的に見れば5人の人生の半ばまでを綴ったヒューマンストーリーといえる内容。

野本さんは、結構女性に持てるのですが、自分は日陰者的な存在という自覚から、「夜の側に立つ」というタイトルがつけられたのか?

小野寺作品特有の優しい人を主人公とした作品でした。

今日はこの辺で。