映画「由宇子の天秤」「英雄の証明」

4月5日(月)はギンレイホールとシネマカリテをはしごで2作品鑑賞。いずれもなかなかの面白さで及第点。

日本映画「由宇子の天秤」は、テレビのディレクター兼学習塾の講師を勤める由宇子さんが、いじめ事件のドキュメンタリーを制作する途中で、学習塾を経営する父親が学習塾の生徒を妊娠したことを知り、真実を隠すべきか、それともいじめ事件の様に暗部を映し出す如く赤裸々に明かすべきかという、いわば天秤にかけるというジレンマを映し出す。TVディレクターとして真相を探ろうと関係者のインタビューを、関係者からの信頼を得て行い、上司のGOサインが出ていよいよオンエアとなることが決まるその時に、父親の不祥事を知ってしまう由宇子。父親の不祥事が明るみに出れば、父親の塾は廃塾となり、由宇子自身のディレクターとしての信用もなくなり、テレビオンエアもなくなるという瀬戸際に立ち、由宇子は妊娠した生徒を闇で堕胎することに奔走する。しかし、そこで待っていたのは最悪の事態であった。何ともやるせないドラマだが、父親のとんでもない不祥事には、由宇子ならずとも、その怒りは想像を絶するものがあった。由宇子役の瀧内公実が、大役を見事にこなしていたのが印象的でした。

イラン映画「英雄の証明」は、イランの代表的名監督であるアスガー・ファルハディー作品。借金を返せずに刑務所暮らしの主人公ラヒムには婚約者がいるが、その婚約者が金貨が入ったバッグを拾い、金貨を換金して借金を返すことにするが、思うような金額にならないこともあって、持ち主に返すことに。バッグを返したことが英雄的行為と話題になって、一躍慈善団体から英雄扱いされ、寄付金もたくさん集まる。しかし、当の貸主は、ラヒムの人間性を信じずに、やがて英雄ではなく詐欺師ともみなされるようになる。ラヒムは必死になってバッグを返した女性を探すが、どうしても見つからず、やがて婚約者をその女性に仕立て、それがばれて取り返しがつかなくなる。

喜劇のような悲劇のような不思議な作品なのだが、アスガー監督らしく、イラン社会の生活感を醸し出して、イランという国のおおらかさが垣間見える作品である。借金で刑務所に入っているが、謝金を返せば出所できるというシステムがあるイランの刑務所。ところがすでにラヒムは返す前から出所しているのが不思議なところ?(もしかしたら眠っていて見逃したかも)。こうしたおおらかな刑事司法システムもイラン独特なものなのか。

今日はこの辺で。