瀬尾まいこ「幸福な食卓」

瀬尾まいこさんの作品集中月間二作目は「幸福な食卓」。4編の連作短編となっており、主人公はいずれも「私=佐和子さん。幸福な食卓を囲むのは私と兄の直さん、そして両親の4人。四人は1年前までは必ず朝食を揃って食べていたが、今は3人=私、直さん、父親。母親は何故か一人暮らしをしている。幸福の家族に何があったのか?興味が尽きないところだが、あとで語られる悲劇は、父親が浴室で自殺を図り、母親は脱衣室で放心状態、娘の私が救急車を呼んで、父親は助かる。母さんは、父さんと一緒にいると呼吸が乱れ、イライラし、不安になり、感情的になっていた。これを契機に母親は一人暮らしを始めることに。本作では自殺の原因がはっきり語られず、読者に解釈をゆだねる形。

ある日突然、父親が「父さんを辞めて、教師もやめる」と言い出す。私も直さんも特に反対はしないが、父親は実行して、薬学部を目指すために猛勉強するという。既に直さんは就職していて、私は中学2年生。母さんは一人で近くに住んでいるが仕事もしているので、生活は何とかなるという判断。こうした一風変わった家族のなかで、私が中二から高3までの出来事が語られる。いくつかのエピソードが出てくるが、一番は私が好きな同学年の大浦君が新聞配達中に交通事故にあい亡くなってしまうこと。大浦家はお金持ちなのだが、自分で稼いだお金で私にクリスマスプレゼントしたいからと言って、急に新聞配達を始め、それで事故にあってしまったのだ。私は大きなショックを受けて何日も自暴自棄になり、家族の前で「死にたいと思ったと父さんが助かり、生きたかった大浦君が死んでしまうなんて」などのショッキングな言葉まで吐いてしまう。父さんも直さんもこれに対して何も言わない家族。直さんの恋人にシュークリームのプレゼントをもらい、やっと立ち直れる私。大浦君の家を訪ねて、自分で編んだ大浦君へのプレゼントのマフラーを大浦君のお母さん渡すのであった。

今日はこの辺で。