結城真一郎「名もなき星の哀歌」

結城氏の作品は初めてとなるが、本屋大賞の事典になったという本屋大賞の次点になったという話題作でもあり、期待して読んだ作品。確かに途中までの展開は面白かったのですが、やはり記憶の取引を水晶玉を通して行うという、非科学的な要素があること、話が次第に複雑になり予定調和的に主人公に帰結していくというストーリーに違和感があったこともあり、非現実的な要素が目立ってきて私としては不満足感が残りました。

主人公の良平と、彼の唯一の親友である健太が、ジュンさんに誘われて記憶の取引の顧客探しのアルバイトを始める。3年間で1,000万円以上稼ぐことを条件に出されて二人は奮闘。銀行に就職している良平が顧客候補の情報を健太に流し、健太が候補に営業をかけて記憶の取引、即ち「いやな記憶を消したい」と「好きな記憶を買いたい」人にその願いをかなえるという商売をする。うまく説得できた顧客に店に来てもらい、水晶に触ってそれを実現してお金を稼ぐ。そうした顧客探しの家庭で、健太が星名という女性のストリートシンガーが人探しをしていることを突き止め、水晶玉から記憶を探り出して、彼女の望みをかなえようと奮闘する。そして彼女の探す人、彼女曰くナイトが、実は良平本人だったことが最終的に分かるという話。良平は過去の自分の記憶を消し去ることで自殺したかった時期があったのだ。おまけに健太もかつて記憶の取引をしていたことも判明。この辺が予定調和的で、いわゆる「できすぎ」。勿論、ジュンさんが二人の過去を知っていてスカウトしたという事実があるので、降ってわいた話ではないのですが。

今日はこの辺で。