大門剛明「共同正犯」

大門作品三作目は、連帯保証人制度という極めて理不尽な保証制度に翻弄される人たちの物語を描いた「共同正犯」読了。

鳴川仁は、かつては製鎖工場に勤めていたが、今は居酒屋を営む人のいい青年。何か面倒なことを頼まれると断れないような、誰からも好かれるような男。鳴川が恋心を抱く、かつて勤めていた製鎖製造会社の女社長である弓岡翔子さんが、会社の取引先だったくだらない男から雇われ社長を頼まれ、3億円以上の借金の連帯保証人になり、その男がさっさと自己破産したことから3億円以上の債務を負い、製鎖会社を手放さなければならなくなったため、何とか彼女を救おうと奮闘するが、金はどうにも集まらない。連帯保証なしの金融会社を営む小寺沢にも頼むが断られる。勿論翔子も万策尽きての判断。債権は長山という不動産屋にあり、悪辣な取り立てで有名な男。そんな長山が何者かに殺害される。その犯人探しに岩田公平警部補と池内準規刑事が犯人を特定していく。主人公の鳴川は長山が殺されている現場に最初に出くわし、翔子の仕業かも知れないと思い、首つり自殺に見せかけるため、自宅で死んだことにしようと死体を移動してしまう。そんな行動も岩田刑事はすぐに見破り、連帯保証のために両親を失った小寺沢に絞り込んでいく。そんな岩田刑事を見ながら、池内刑事も成長していく姿が描かれる。

翔子を何とか守ろうとする鳴川や周りの人達の何とも言えない人情噺が繰り広げられる。

最後には小寺沢が特定されるが、かつて製鎖工場で働いていて、行方不明になっている池内刑事の兄の篤が、実は先代社長の過失で階段から落ちで死亡し、その死体を工場の地下に埋めていたのが鳴川だったことも語られるという落ちが付くのでありました。

ちなみに、法改正で連帯保証については、連帯保証人が公正証書で意思を示すこと、及び主債務者の財産状況の開示など、ハードルを上げて、連帯保証人を保護する制度に変更になっています。連帯保証による悲劇が生まれないことを切に願う次第です。

今日はこの辺で。