安生正「生存者ゼロ」

安生正作品は初めて。作家名も知らなかったのですが、「このミスがすごい」大賞作品ということで、図書館で借りてきた次第。

2013年刊行作品で、勿論新型コロナのパンデミックよりかなり前ではありますが、いわゆるパンデミックもののスケールの大きな作品で400ページをほぼ斜め読みで読了。

序章で出てくるのは富樫という細菌学者で、感染研で当時の部下に当る研究者の罠にはまり、アフリカの奥地で妻と幼い息子とでひっそりと研究生活を送っているが、妻が病気にかかり死去。子供も亡くなり、放心状態で帰国。富樫が主役で活躍するのかと思っていたが、第二章以降の主役は廻田という自衛官

北海道東方沖で石油採掘をする海上プラットホームで細菌によるパンデミックが発生。そこで働いていた職員全員が無残な姿で死体で発見される。それを命令で赴き発見したのが廻田などの自衛官。以後パンデミックの原因が何なのかの調査が廻田を中心に、富樫なども引き入れて行われる。細菌と思われるものが北海道の小さな町にも押し寄せ、町民が犠牲になり、更には道東地方にも広がり、札幌への拡大も近づく。この間政府は首相はじめ官房長官、危機管理担当大臣などが全くリスク管理に無頓着で、自衛官など制服組はいらいらする状態が続く。廻田は孤軍奮闘するが、東京の中央政府は何とも腰が重く、現場の状況を理解しない。これは正に東日本大震災時の原発爆発事故対応時の政府対応を揶揄しているような様相。富樫が重要な役目を担うかと思いきや、実際にパンデミックの原因を突き止めたのは若い女生物学者の弓削。彼女が実は原因物質が海底油田からの水を浴びたシロアリであり、新月の時にシロアリが大暴れすることに気づく。いよいよ札幌が次の新月に危ないと悟った調査チームは、首相に直訴するが、首相は決断できない。刻々と迫るパンデミックに何も決められない政府を見限って、廻田チームは政府を恫喝し、札幌市民の非難を実行する。しかし、時すでに遅しでシロアリはものすごい勢いで札幌市民を襲うのでした。

スケールが大きい話ではありますが、シロアリが大量発生するという原因でこれだけのパンデミックが発生するかという点は若干弱いかなと思った次第。ウィルスが拡散するという設定の方が今的には正解かなと思ったのですが。

今日はこの辺で。