凪良ゆう「私の美しい庭」

凪良さんの作品第二弾は「私の美しい庭」。この作品はほっと心温まるお話で心地よい余韻が残ります。

百音さんは10歳の小学生で、統理さんと暮らす。二人の関係は複雑で、統理さんと離婚した女性が再婚してできたのが百音さん。その両親が交通事故で亡くなってしまい、行き場所がなくなった百音さんを、血のつながりのない統理さんが引き取って父親となっている。統理さんは、親が残してくれたマンションの一室に百音と住み、このマンションに住む人、あるいは住んでいた人のドラマが展開します。

路有さんはカミングアウトしているゲイで、統理さんのマンションの一室を借りて住んでいる。路有さんは夜間、車で屋台バーをやっていて帰宅するのが早朝で、朝食は必ず統理の部屋で作って3人で食べている仲。そんな路有さんには、今は彼氏がいないが、4年前までは忠志という恋人がいて同居していたが、親の病気を機に里帰りしてから、親孝行のつもりで女性と結婚している。そんな忠志からハガキが届き、やむに止まれず彼の家に車を飛ばす。そこで忠志から子供ができること、でも離婚を考えている。自分はやっぱり路有が忘れられない。一緒にどこかに逃げてくれないかと懇願される。路有は自分を棄てた忠志が勝手なことを言っていることに腹が立ち、忠志の居場所は妻のところしかないことを悟らせるのだった。ここでは、路有が何度もゲイとして苦しい思いをしていたことが語られるが、それを助けてきたのが統理だったのだ。統理のマンションの屋上には神社があり、統理は宮司も務めながら翻訳の仕事をしているが、その屋上には美しい庭園があり、表題にもなっている。

統理のマンションに住む桃子さんは39歳の医療事務をしている方。彼女には高校時代に素敵な恋人がいて、その恋人もかつてはマンションに住んでいたことがあった。高3の時にその同級生の彼氏が交通事故で亡くなり、未だに彼が忘れられず、今に至っている。性格もよくて、周りからは縁談の話を進められるが、なかなかうまくいかず。勤める病院では上司と後輩の板挟みにあい、陰では悪口もいわれストレスもたまる日々。そんな桃子さんは、統理と百音の関係を知る。屋上にある神社は「縁切り」の形式というものがあり、彼女は「世間体」からの縁切りを形式に書いてお参りするのでした。

桃子さんの恋人の弟の基さんは、東京の大手ゼネコンに就職し、現場での長時間労働や、上司と下請けとの板挟みなど、想像を絶する労働環境から鬱病を患い会社を退職。今は実家で両親と暮らし、通院する日々。薬を飲んで回復に向かってはいるが、東京で知り合った女性との間にしこりが生じてしまう。実家に帰って兄の命日に一人で墓参りに行くが、そこで桃子さんに出会う。桃子さんと話すうちに心穏やかになる。更に統理のマンションの線香花火大会にも誘われ、桃子や統理、路有、百音たちと話すうちに、もう一度自分を愛してやろうという気になるのでした。

「私の美しい庭」は、悩みを抱えた人たちが集い、心を癒す場であり、それを統理が丁寧に維持して守っている場所。そこは「同じだから仲良くなろう」ではなく、「違うけど認め合おう」を大切にする場所なのでした。

冒頭でも書きましたが、苦しさや寂しさを抱えた人たちが、心を癒せる作品でもあると感じた次第です。

今日はこの辺で。