中山七里「特殊清掃人」

多作で知られる中山先生が、今度は新たなシリーズになりそうな「特殊清掃人」をお書きになり、第一作として4編の連作短編が展開される。

特殊清掃人とは、孤独死などして長期間発見されず、遺体が腐敗してしまい、住んでいた部屋が汚染されてしまい、それをきれいに清掃する商売。「エンドクリーナー」という会社を立ち上げたのは五百旗頭亘という元刑事。社員は白井さんと佳澄さんに二人だけ。二人とも前職をやめて、一日も早く職に就きたいことから、給料のいい会社ということで選んだものの、その仕事のきつさは尋常ではないもの。死体そのものは既に警察が運び出しているものの、残った異物や腐敗物など、想像を絶するものの処分と、形見の処分がお仕事。

「祈りと呪い」は、30代の女性がゴミ屋敷のようなアパートの部屋で亡くなる。彼女は会社のディーらに勤めていたが本来は地味な子女性。部屋はすごいゴミの山ながら、クローゼットの中は綺麗に服がかけられている。特に男物のジャケットが目立つ。彼女は実はトランスジェンダーながら、母親からそれを拒否されて育ち、彼女の生きる道が亡くなってしまった結果だった。

「腐植と還元」は、独身のスタートアップ企業の社長が、熱い浴槽の中でなくなり、そのお湯の中に1週間以上使っていたことから、浴槽はジュース状態。この過酷な環境の掃除を任されたエンドクリーナーの五百旗頭と佳澄。社長の死は病死と判定されたが、彼には幼いころからの壮絶な過去があり、女性に対してある種の偏見があり、社員3人の愛人がいたが、更にもう一人、マンションオーナーの娘さんとも付き合っていたことがわかり、彼の死は素の高校生が関係していた。

「絶望と希望」は最も気に入った作品。白井社員が赴いた部屋の住人は死亡後1週間近く後に発見されたが、大学時代のバンド仲間。白井は彼の大学卒業後の足跡を知ろうとパソコンの中身を見ると、素晴らしい曲があった。そしてその曲は、同じバンド仲間でプロのボーカルをしている女性が歌ってヒットしているではないか。女性が盗作したのか?との疑問から彼女にアクセスした結果、この曲は死んだ彼が女性に託したものだった。

「正の遺産と負の遺産」は、資産家の投資家が亡くなり、1週間近くたって見つかる。早速3人の娘が押し寄せ、金目の物を物色。五百旗頭たちは別途を処分するため解体すると、下から金庫が見つかる。その金庫には二通の遺言状があり、均等に分けてくれとの遺言と、もう一通、もし不信なしであれば殺人として捜査してくれとの中身。その後長女と次女が偽造された遺言状を持ってきたりとてんやわんや。死者は、まやかしの宗教に大金を注いでいる長女と次女には遺産を残したくなかったという推測を五百旗頭は立てるのでした。

今日はこの辺で。