中山七里「ラスプーチンの庭」

中山先生が医療批判を盛り込んだ作品「ラスプーチンの庭」読了。

中山氏の小説は例外なく五章から構成され、ほぼ250~300ページの長さと決まっている。そうした定型パターンを作っているから多作が実現しているのかわかりませんが、とにかく多作な作家。それでも標準以上の作品が大部分の為、尊敬に値する作家なのですが、本作については期待倒れの感が否めませんでした。

第一章「黙示」で、グーちゃんとユーちゃんの幼い姉妹が登場し、両親と幸せな生活を送っているが、突然父親がALSを発祥し大学病院に入院。病院からは保険外診療を進められ、母親はダブルワークで働き診療費工面に四苦八苦。しかし、病状はよくならず亡くなり、母親も後を追って自殺するという不幸にあう姉妹。姉妹は大学病院が父母を殺し家庭崩壊を招いたと思い復讐を誓う。

第二章~四章は、何ら医学的根拠のない治療方法で診療を行い、大学病院から患者を奪う、いわば新興宗教的な団体が登場し、人気タレントがそこで診療を受け完治するというような話が出て評判を呼ぶ。しかし、教祖とも言うべき人物が殺されて、中山作品で常連の犬養刑事が登場してくる。

第五章「殉教」で漸く第一章のグーちゃんとユーちゃんが成人した姿で登場し、誓い通りに復讐を果たすと目論むのだが、残念ながら、あえなく御用となる。

中山作品特有のどんでん返しは、第一章で黙示されているため、インパクトが少なく、標準診療と自由診療の対決という視点も現実離れしており、全体的に盛り上がりに欠け、中山作品としては標準以下と評価せざるを得ない内容と感じました。

今日はこの辺で。