中山七里「ヒポクラテスの試練」

中山七里のヒポクラテスシリーズ第三弾、「ヒポクラテスの試練」読了。シリーズ物は登場人物のキャラクターがわかっているので、すいすい読める利点があります。今週月曜日に図書館で借りた二冊、「合唱」と本作はいずれもシリーズものであることから、34日で読み終えることができました。

いま世界中が新型コロナウィルスによるパンデミックが発生していることから、これにヒントを得た作品かと思いきや、2017年に雑誌に連載された作品とのこと。ある意味先見性がある作品です。

前二作と違い、連作短編ではなく、体内寄生虫による突然死の原因を究明するというストーリー。いつもは古手川警部や真琴助教に指示を出すのが専門の水崎教授が、寄生虫によるパンデミックを発生させんがために、自ら警察や都議らに会いに行き、説得や要請をする場面もあり、パンデミックを恐れる姿が浮き彫りにされます。新型コロナと違い、口径感染が中心の寄生虫による病気のため、大事には至りませんでしたが、今作ではアメリカニューヨークまでが舞台となり、キャシー先生も大活躍します。

一番の読みどころは、アメリカに視察旅行に行った都議一向のうち、二人がエキノコックスという寄生虫により死亡し、残り五人にアメリカでの立ち寄り先を聞き出す場面。水崎教授自らが出張って要請するのですが、どこに行ったかを頑として言わない都議たち。その裏に隠された邪悪な視察旅行の一端が暴露されます。地方議会の議員による政務活動費の問題があちこちで明るみになる中、中山先生も地方議員への警鐘を鳴らしています。

都議たちのその後の悲惨な状況が描かれないのは残念でしたが、このような議員の存在が、日本の政治を堕落させていることも忘れてはなりません。

今日はこの辺で。