桜木紫乃「ブルース Red」

前作「ブルース」を2015年に読んで8年がたっており、ほとんどストーリーは覚えていませんが、本作「ブルース Red」はその続編。桜木さん独特に筆致で、道東釧路の町を舞台に、裏社会を牛耳る主人公、景山莉菜が釧路の町の寂しい雰囲気をバックにした人間ドラマ。前作では、6本指を持つ貧民窟育ちの景山博人が、その器量と度胸で、釧路の裏社会を牛耳るに至る過程を描いた印象がありますが、その博人亡き後、その役目を忠実に継いだ莉菜が、運転手兼秘書の弥伊知、博人の血を受け継いだ息子の武博、武博の戸籍上の父親や実母などの人間関係を映し出す。

莉菜は博人の妻となったまち子の連れ子で、博人に育てられ、博人の裏社会での生き方を学んで育つという背景があり、莉菜が30代から60代までの生きざまを描くのであるが、最大の莉菜の目的は、博人の血を引く武博をバックアップし、将来の代議士に育てること。武博もそれに応えて、のし上がっていくのであるが、それは傍流で語られるだけ。本作は10篇の連作短編で構成されるが、私が一番興味をそそられたのは「あだうち」。かつて市長の座を争い、景山勢力が応援した候補が勝つのだが、その候補は武博の戸籍上の父親。今度は、その父親勢力を追い払うために、敗れた候補の娘を担ぎだし当選させ、あげくには、その市長の政策から、莉菜ほかの景山勢力が衰えて、莉菜自身も釧路を離れて瀬戸内海にまで流れていくというところ。

莉菜は武博を国政に送り出し、博人の血が絶えない状況を作って満足したという話でした。

今日はこの辺で。