道尾秀介「いけない」

「いけないⅡ」を先に読みましたが、話は全く違うので関係なしということで、いけないシリーズの第一作「いけない」読了。このシリーズは、何の関係もない話とは思いきや、何らかの関係があり終章で完結するという醍醐味があり、第一章から楽しみな謎が隠されている。

第一章「弓投げの崖を見てはいけない」は、「弓投げの崖」という自殺の名所のような場所の近くを通るシーラインでは交通事故も多いことで知られる。ある日、安見邦夫はシーラインを南下し崖を過ぎて右折してトンネル通過中、前方にハザードランプを付けて停車中の車があったことから、注意して車を追い越そうとしたとき、その車が急に走り出したことからハンドルが切り切れずに接触し、トンネルの側壁にぶつかり、意識を失いかける。助手席は陥没状態。その時急発進した車の男が邦夫を引きずり出して壁に頭をぶつける行為に出て殺害しようとたくらむ。乗車していたのは3人の不良仲間。そこから、安見家の3人への復讐が始まる。まず、運転して邦夫を殺した男が同じ場所で頭をかち割られ殺される。同乗していた兄弟は、安見の妻が殺したと信じ込み、弟の方が妻を殺しにアパートに向うと言ってから行方不明に。その弟も殺され、残るは警察から逃亡した兄だけとなる。実は邦夫は頭をぶつけられたことで全盲になるが死んでおらず、助手席には邦夫と弓子の子供が乗っており、子供が殺されたのだ。邦夫はまず運転していた男を殺し、訪ねてきた男も殺したのだった。

第二章「その話を聞かせてはいけない」

馬珂は中国から家族で日本にわたり、両親が中華料理店を営む家の一人息子の小学生。来日して5年になるが、保育園の時から現在の小学校でも、その名前の日本語読みからバカと言われていじめられている。珂はある日、色鉛筆を万引きしようと文具店にはいるが、棚の高い段にあって諦めて店を出るが、再度中を覗くと、男が店番のおばあさんを殺して何かに包み、軽自動車に載せて過ぎ去るのを目撃する。同級生の山内だけには話すが、相手にされない。翌日再度文具店に行くと、おばあさんは店にいて生きていた。おばあさんに昨日見たことを話すと、気分が悪くなって甥っ子に車で病院に行ったのを見間違えたのでは、と言われ、珂は自分が嫌になるほどの気持ちになる。家に帰り何気なくテレビをつけると、河原で遺体が発見され、文具店のおばあさんとあの男が知り合いということで、インタビューに答えるところが映し出される。珂はやっぱり自分が見たのは本当だったのだと確信。そんな時チャイムが鳴り扉を開けるとあの男が襲い掛かり、珂は車に乗せられ拉致され、着いた先は弓投げの崖。珂橋を覚悟するが、頭にかぶせられた袋を外さないと自殺に思われないと言って一計を案じ、二人を崖から突き落とす?のであった。

第一章で出てきた安見邦夫が、珂が保育園の時にただ一人彼を理解していたという話が出てくるが、これが今後どうつながっていくのかがお楽しみ。

第三章「絵の謎に気づいてはいけない」

隈島刑事が異動した後、パートナーだった竹梨刑事は、新人の水元刑事とコンビを組むことに。十王還命会という宗教団体の幹部だった宮下志穂という女性がマンションの自室で死体で発見される。状況的には自殺と考えられるが、水元は第一発見者の宗教団体の上司である守屋と、不動産屋の中川をから発見時の事情を聴取し、二人に不信感を抱く。ところが、中川が河原で遺体となって発見され、中川の手帳に自殺したと思われる女性の発見時の簡単な絵と文字があり、水元は守屋が女性を殺し、中川がそれを知って守屋を脅迫していたのではないかとの推論を竹梨に訴える。その翌日、水元が寮で遺体となって発見される。竹梨とはいったい何者なのか?

終章「街の平和を信じてはいけない」

安見邦夫は、今まで自分が侵した犯罪を妻の弓子に文書にしてもらい、全ては自分一人の犯行であることにして死を覚悟する。この文書を竹梨刑事に渡すために、弓投げの崖近くの公園に呼び出す。文書を渡したとき、邦夫が保育園でいじめめから守った珂が友達と現れ、邦夫に礼を言う。それを聞いて、生きる希望を持った邦夫は、渡したばかりの自白文を竹梨のかばんから隙を見て抜き去る。竹梨のかばんにはもう一通、竹梨自身の自白文書があり、邦夫はそれを抜き取ってしまった。邦夫は抜き取った文書を破り捨てる。そして、竹梨は邦夫の自白文をどうするか?邦夫が破り捨てた竹内の告白罪、文書には、自分の犯した罪が書かれていたのだ。妻の自殺は自分のせいであること、十王還命会との出会い、その関係者の事故や殺人を隠蔽したこと、水元を殺したこと。でもそれはもう破り捨てられたが、竹梨は知らない。自分は安見邦夫の罪を知っていること。竹梨が邦夫を捕まえることはないと、私は予測するし、実際そうなるだろうと。

今日はこの辺で。