太田愛「幻夏」

太田愛さんは、テレビドラマ「相棒」や「トリック」などを手掛けている脚本家を本業としていたとのこと。そんな彼女がサスペンス小説の三部作を次々に発表しています。最初が「犯罪者」。二作目が本作、そして三作目の最新作が「天井の葦」。一作目と三作目は上下巻の大作。本当は一作目の「犯罪者」から読むほうがいいのでしょうが、事件は全く違うということで、「幻夏」の文庫を購入、読み始めました。この作品も500ページ近い大作ながら、読み進むうちにその面白さに引き込まれ、あっという間に読了しました。(但し、遅読の私にとっては)
太田さんの三作とも、一本気な刑事の相馬、相馬の友人で興信所所長の鑓水、そして第一作後に鑓水の興信所で働く修二という青年が事件を追う構図になっているようですが、この作品も同様。23年前に行方不明となった相馬の友人、水沢尚と弟の水沢拓、そしてこの兄弟の母水沢香苗、父の柴谷哲雄をめぐる冤罪事件の真相に迫る物語。警察及び検察の筋読みから生まれる冤罪、冤罪を生んでも誰も罪を問われない司法制度の矛盾など、多くの要素を含みながら、手に汗握る展開で読者を飽きさせないストーリーは、さすがに脚本家として鍛えたエンタテイメントの才能を感じさせます。
そして、相馬、鑓水、修二のキャラクターがそれぞれ個性があり、物語を面白くしています。是非お勧めのエンタテイメントサスペンスです。
早速、今は第一作の「犯罪者」を読書中です。
今日はこの辺で。