映画鑑賞初めに三題

2022年が明けました。昨年は母と兄が11月、12月と続けて亡くなり、あわただしい年末となりましたが、さて今年はどんな年になるか。

早速1月2日、3日に映画鑑賞に行ってきました。

2日(日)は地元下高井戸シネマにて話題の映画「ドライブ・マイ・カー」鑑賞。1月2日にもかかわらず、満員の盛況でびっくり。3時間の長編で、もしかしたら眠くなるのでは?と心配しましたが、どこか魅力的な要素があるのでしょう、不思議と眠くならず、全篇を見ることができました。

観賞前に、家にあった「女のいない男たち」の文庫本を取り出し、原作を再度読んで、70Pほどの短編小説がどうやったら3時間の長編映画になるのかを確認しようという心構えがあったことも、眠気をも要さなかった原因の一つかもしれません。

小説では、最愛の妻が亡くなり、その妻には4人の不倫の男がいたこと、長年故障なしの愛車の修理に出した修理工場で女性運転手を紹介され、その運転手との奇妙な会話、妻の浮気相手の男との対話などが語られますが、映画は、妻の浮気、愛車、自らの緑内障、女性の若い専属運転手といった骨子は盛り込むものの、多くのエピソードを盛り込んで、村上春樹ワールドから濱口竜介ワールドに衣替えした映像が展開されます。冒頭の妻の浮気に遭遇する場面からして、小説からは大きく逸脱していてどっきり。終盤近くで浮気相手の高槻が逮捕され、自分が役者として出演するか否かの局面が出てきて、広島から北海道まで車を飛ばすという、ちょっと荒唐無稽な発想も濱口監督のオリジナル。あるいは手話の韓国人が役者として出てきて、かなり長い時間の手話場面が2度にわたって展開されるのも濱口オリジナル。

全体を通して、どこか不思議な魅力のある映画ではありましたが、3時間の長編にするべき映画だったのかには、若干疑問が湧きました。

1月3日(月)がギンレイホールにて邦画二題鑑賞。

「街の上で」は街=下北沢を舞台に、27歳の男性主人公と、彼を取り巻く下北沢の若者たちの何気ない人間関係を淡々と、そしてユーモア交えて描く人間ドラマ。この映画もまた、不思議な魅力のある作品で、眠気は全く感じず、拾いものの作品でした。

主人公の男性は、あまりみんなとつるむたちではなく、女性関係も奥手。そんな彼が、初めての恋人や映画撮影で出会った女性との関係を淡々とした会話を通して、今の若者の生態を描いている。特に後者の女性との会話場面は秀逸。よくできたシナリオのなせる業か。エンドロールでは、やはりたくさんのスタッフが関わっているのですが、役者さんはほとんど無名の方々で、どう見ても低予算映画。低予算ながらエンタメ的にも面白い作品に仕上がっており、脚本の力を実感。ただし、監督の今泉力哉監督は、青春映画を何本も取っている監督さんだけに、素人監督ではなかなかこれだけの作品は取れないでしょうが、映画作家を志す人には、大変参考になる作品のような気がしました。

「浜の朝日の嘘つきどもと」は、福島中央テレビ開局50周年記念作品としてつくられた、日本版「ニュー・シネマ・パラダイス」。震災後の南相馬の映画館を舞台に、映画好きの人達が織りなす人間ドラマを描きます。震災でばらばらとなった家庭の娘と、彼女が高校生時代に出会った映画好きの女性教師とのかかわり、映画館を閉館しようとする館主と、そこに現れる前述の女性。女性は何とか映画館の復活を期してクラウドファンディングなどで資金集めや映画宣伝を行い、館主もその気になって映画の灯を灯そうとする。こちらも高畑充希以外は地味なバイプレーヤー中心の地味な映画ながら、震災を絡ませて、映画の良さを語っています。最後はお金が運良く集まり、解体がストップし、存続が決まるハッピーエンドの形となりますが、現実問題としてこれがハッピーなのか?スーパー銭湯にして、街の癒しの空間をつくり、雇用も創出する方向の方が、南相馬の人達にとっては良かったような気もするのですが。

今日はこの辺で。