前川喜平「権力は腐敗する」

前川喜平さんの「面従腹背」に続く第2弾の著作「権力は腐敗する」読了。

前川さんとは、「子供たちをよろしく」という映画の上映がユーロスペースであった時、上映後の壇上での座談会を観客として聴き、その後喫茶スペースでお茶を飲みながら何人かで話をしたことがあります。その際の印象は、正に講演なので話すリベラルな考え方や、腰の低い態度に敬服したものです。安倍・菅政権の官邸独裁のような政治が続いたため、物言う官僚が少なくなり、忖度が横行するなか、OBの中でも最も反政権的な発言でリベラル派の人気No.1の存在と言えるでしょう。本作では、今まで講演などで聞いていた加計学園問題や右傾化する教育などへの警鐘の他、初めて聞く話も盛り込み、前川さんの優れた見識を再認識した次第。

加計学園問題の真相は、正に前川さんが記すような安倍による政治の私物化に他ならないでしょうが、裏で暗躍した官僚、特に和泉洋人氏については、何でああいった人間が政権に居続けるのかと首を傾げざるを得ない。大坪氏とのコネクティングルーム事件など、官僚の枠を超えた振る舞いがあっても安倍・菅、特に菅に気に入られる何かがあるのか、あるいは、安倍・菅の弱みでも握っているのか。

総務省官僚で唯一菅に真正面から挑んだ平嶋氏の件は、菅の狭量な政治家としての資質を示す特徴的なエピソード。ふるさと納税については、私も何度かやったのですが、今思うと赤面もの。私などは年収も知れたもので、少額の宿泊券を目当てに寄付したのですが、確かに返礼品には数十万円のものも多数あり、現金同等物もありました。「ふるさと納税で年間食費が只」も大げさではない。お金持ちに格段に有利な制度を、自分が中心になって作った制度だからという私的欲望のために、正論を受け入れない菅義偉という人間の狭量さは、やはり首相の器ではなかったのでしょう。安倍にはモリ・カケ・サクラなど、政治の私物化を示すスキャンダルが多いのですが、同じく菅のみにくい行為も枚挙にいとまがない。森友の決裁文書改竄も菅が指示した疑いもあり、更にはぐるなび会長を文化功労者にしたりと、その人事力、政治力を使ってどれだけ汚いことをしてきたことか。日本学術会議の任命拒否事件は、学問の自由を脅かした事件で、岸田になっても任命する気配がないのは、誠に残念である。

さて、前川さんの真骨頂はやはり文科行政。その意味で安倍による学校の一斉休校要請には強い非難を向けている。憲法論と科学的根拠の面から一斉休校には大きな問題があり、安倍官邸一強政権にはそもそも憲法など護る気がないことを示唆。

学校の校則についても批判。校則によって学問を受ける自由が阻害されてはならないことが危惧される。驚いたのは校則に基づき、地毛が茶髪でも黒に染めさせたことで髪が損傷したことにより裁判で、原告の少女が敗訴したという事実。こんな裁判があっていいものかと、憤りさえ覚えた。

前川さんの様な官僚が増えていけばよいのですが、実際は反対方向に向かっていることに強い懸念を抱かざるを得ない。

今TVを観ていると、昨日安倍・麻生・茂木の3大派閥の長が会合を開き、岸田政権を支えていくことに合意したとのニュースを聞き、一方では菅と菅に近い林幹夫、森山前国対委員長、そして石破氏が会合を持ったとのこと。前者の派閥の親分たちは、おそらく岸田政権を支えるのではなく、岸田を操っていこうとの相談をしたのではないか。後者に石破が入っているのは驚きであるが、岸田政権には協力できない組の集まりのはず。自民党内で、こうした動きがあって、岸田はどれだけ自分の思った政治ができるのか?前川さんに言わせれば、一刻も早く安倍・菅政権の呪縛から解放された政治をやらなけれな、日本は衰退するばかりとなるでしょう。

今日はこの辺で。