真山仁「雨に泣いている」

社会派小説を得意とする真山仁氏は、「ハゲタカ」を読んで以来、手付かずでしたが、久しぶりに手に取ったのが、東日本大震災を新聞記者として取材した主人公を描いた「雨に泣いている」。真山さんについては、朝日新聞にも現在の日本社会の社会的矛盾について月一でオピニオンがありましたが、最近目にしないので辞められたのか?

阪神淡路大震災を新人記者として経験した毎朝新聞記者の大嶽圭介を主人公に、東日本大震災発災後直ちに宮城県にキャップとして派遣され、悲惨な災害状況を伝えるとともに、そこで亡くなった和尚さんの過去に触れて、取材に奔走する姿が描かれる。前半は記者として震災のむごさや社内での葛藤、被災者との関係などを描くが、後半は亡くなった和尚さんの過去を追っていくというサスペンスタッチの和風に転換していくのですが、これについては若干違和感があり、最後の展開はどんでん返しではあるものの、大震災の最中の物語として描くのには、何か無理があるような気がしたのですが。

当時のマスコミ取材に対しては、ここでも描かれるように、被災者から見ると邪魔者のように扱われたことがあったと言われますが、いちばん話題になったのが、福一原発事故現場近くには、大手のマスコミが取材を控えてしまい、世論の非難が上がったことを思い出しました。

本作は、発災後の数日間しか描いていませんが、真山氏の前半部分の取材状況については、当時の記者などに取材して現実感を出しているのではないかと感じました。その意味でも後半のミステリー調のお話には残念でありました。

今日はこの辺で。