中山七里「アポロンの嘲笑」

中山先生が東日本大震災福島第一原発事故をバックグラウンドに発生したテロ事件を題材にしたスリラー「アポロンの嘲笑」読了。

中山作品でわかりや易いのは、実名がポンポン出てくること。福一事故も張本人の東電の名前が無責任会社として堂々と語られます。大マスコミと違って、東電など大電力会社とは腐れ縁のない作家としての矜持がうかがえて非常に分かり易く、逆に東電してみれば憎々しい表現でしょう。

7歳の時に阪神淡路大震災に被災し両親を失った加瀬邦彦津波で家族が被災し、子供が行方不明が仁科忠臣刑事。この二人がダブル主役となって物語が進行します。加瀬は両親を失って以降親族に恵まれず、また就職会社も不運にも何社も倒産して、結局ふくしま厳罰の保守要員と働く。そんな加瀬が、両親と死別して初めて家族の温かさを知った金城家との交わり。話は加瀬がその金城家の息子である純一を殺害したことから始まる。その死も結局殺人ではないのですが、それでもその死の裏に隠された重大なテロを防ぐために加瀬は混乱の福一現場に戻ろうとする。その謎を追うのが仁科刑事。そして最後は二人が福一で出会って・・・・。

非常に壮大な話ではあるが、決して他人事ではないお話。現在の原発規制委員会が各社に課しているのもテロ対策用の重要施設の建設であり、東電柏崎刈羽原発で見つかったのもテロ監視施設の不備。彼の国が原子爆弾の発射よりもほかの形で原発を狙うことも十分に考えられることから、その警鐘を中山先生が鳴らしているのではないか、とは考えすぎか。

東野圭吾の「天空の蜂」も原発へのテロを想定した小説でしたが、本に恐ろしいこと。やはり日本には原発はないほうがいいとは私の持論でありました。

今日はこの辺で。