上間洋子「裸足で逃げる」

上間洋子氏は沖縄生まれで、現在は琉球大学教授。主に未成年少女たちの調査や支援を経験し、現在に至っている方。上間氏が沖縄での未成年少女の調査・支援する中で知り合った、主に中高生時代に出産を経験し、シングルマザーとして生活する女性との交流の中で、パートナーとなった男性からのDVで離婚し、キャバクラで生活費を稼いでいるような実態を追った作品、「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」読了。

7名の少女との交流から、原稿を起こし、著作としてまとめた作品だが、いずれも貧困や虐待の連鎖のような環境で育ち、出会った男性からも暴力を受けたり、離婚しても養育費を払ってもらえず、またキャバクラで働かざるを得ない少女達の生態が描かれるが、沖縄にこうした少女が顕著に多いのか否かは別として、根底には貧困があるのは事実。そんな中で、自分で生きていかなくてはならない少女たちが頼るのは、その正体が図らずに近づいてしまうDV男たち。子供をつくっても責任を取ろうとしない姿は、同じ男として情けないが、彼ら男たちも同じように環境で育っているのでしょう。

シングルマザーとして歳を重ねる中で、再び貧困の連鎖が子供たちを縛ってしまうことが心配であるが、一人だけそんな連鎖から抜け出した女性が看護師になった鈴乃さん。中学時代に恋人ができ、高校2年で妊娠・出産。恋人はDV男で、その暴力が影響して早産。生まれた子供には重い障害が。男は責任を取ることはなく、鈴乃さんは高校を中退し、男と別れ、生まれた娘を育てることに。キャバクラに通いながら、思い立って定時制高校で勉強し、娘の面倒を見てくれる病院の看護師さんをと接しているうちに看護師になりたいと思い立ち、看護専門学校で進んで立派な看護師になった方。娘さんは施設に入っているが、毎日娘に会いに行っているとのこと。こうした方はごく少数派なのでしょうが、少女たちが立ち直るきっかけを作っていきたいのが、上間先生の願いでしょう。

沖縄だから特別ということは決してなく、貧困の連鎖はどこでも見られる現象。何とかそれを断ち切る製作が望まれるのですが。

今日はこの辺で。