映画「少年の君」

今最も巷の話題は、オリ・パラ開閉会式の音楽担当だった小山田圭吾氏の、かつてのいじめ体験と面白おかしくインタビューに答えていたことの過去が表面化し、辞任したこと。小山田氏の25年以上前のインタビュー記事は、正にいじめられた側の痛みを全く解してはいない、胸糞の悪い記事で、この雑誌を作った編集長も今謝罪するほど。当時が決していじめに寛容な社会風潮があったことはなく、よくそのまま記事にしたと思うほど。ただ、少なくとも小山田氏が障碍者朝鮮人など、社会的弱者を犯罪的な行為でいじめていたことは間違いないようで、本人も今は謝罪している。これに対して、五輪組織委員会の武藤事務総長は当初、「現在は倫人格的に問題なく云々・・・」と続投を発表していたが、騒ぎは収まらず万事休す。本人の辞任て決着したが、組織委員会の人選過程や報道後の対応は、何とも後手続きでお粗末。一番気になるのは、今の本人が、過去の行為に対して本当に反省し、障碍者なり弱者に寄り添っている気持ちがあるかですが、この辺の事情は本人にしかわからない。少なくとも目に見える行動をして、それを示してきたのであれば許されるのだが。

そんないじめ事件報道の最中、本日7月20日(火)、武蔵野館にて中国映画「少年と君」を鑑賞。中国の厳しい受験戦争の中、進学校で起こった凄惨ないじめをテーマに、現在の中国社会の学歴第一主義的な傾向と、落ちこぼれていく若者たちの姿などを感動的に描く作品で、私が今年観た作品の中ではピカ一ともいうべき傑作。

主人公は名門進学校に通い、北京大学や精華大学を目指す女子高校生と、ドロップアウトしてしまったチンピラ少年。女子高生は、いじめで飛び降り自殺した同級生に代わっていじめの対象となり、追い込まれていく。そんなときであったのが、リンチされていた少年。少年は女子高生のボディーガード役までして、いじめグループから守ろうとするが、いじめる側の女子高生が死体で発見される。ミステリー要素を含みながら、二人の心の触れ合いを繊細に描き、久しぶりに涙腺が緩んでしまいました。

本作は実話をもとにしてつくられたとのことで、この事件以降、いじめ対策が国家の政策となったとの字幕が最後に現れる。

韓国の受験戦争もし烈とのことだが、中国もまた名門大学への入学が人生を決めてしまうお国柄。映画では、学校あげての受験教育が描かれ、学校というより予備校といった方が適切な雰囲気。科挙の歴史のある中国では、未だその伝統が残っているのでしょう。

最後の最後の場面で、二人の幸せな姿が見られるのが救いとなりました。また、香港の自由が奪われたり、新疆ウイグル地区の人権侵害が問題になる中、本土中国の映画にもこれだけの作品を送り出す作家がいることも喜ばしいこと。

是非とも観ていただきたい映画ですが、東京で上映しているのが2館のみ。これからもっと広がっていけばよいのですが。

今日はこの辺で。