中山七里「テロリストの家」

7年前に、北海道大学の学生がイスラム国の兵士募集に応じていたこと、古書店主が求人広告を出していたこと、そして元大学教授もこの古書店主から志願者を紹介してほしいと言われていたという事実があり、大騒ぎになったことがあった。中山先生は、この出来事を下地にして本作「テロリストの家」を書きあげた。

警視庁公安部の刑事、幣原勇一郎が主人公。自らも公安のエース級刑事と自認する幣原だが、なんと息子の大学院生秀樹がイスラム国の求人に応募していたことが発覚し逮捕され、幣原も閑職に追いやられる。灯台下暗しの状態であった幣原への風当たりは職場内はもちろん、マスコミやSNSで最高潮に達する。秀樹は容疑不十分で釈放されるものの、監視は続き家族生活はバラバラ。妻や子供からは公安刑事であることをさんざん非難され、自分もまた家族のそれぞれの生活や個性を全く理解していなかったことを思い知る。そんな中、秀樹が何者かに殺される事件が発生し、ますます家族は厳しい立場となるのだが・・・・・。

よく「公安」は、刑事小説では悪者扱いされる部門で、何をやっているかわからない部署として描かれるケースが多いのですが、中山先生もいろいろ公安について調べて書いているのでしょう、その実態なるものが垣間見える作品になっています。最後にどんでん返しが待っているのは中山作品の定番。なんとなく読めるようなどんでん返しではありましたが、それでも面目躍如ではありました。

今日はこの辺で。