中山七里「作家刑事毒島」

中山先生の毒島刑事シリーズ「作家刑事毒島」読了。警視庁刑事だった毒島は、取り調べ中に容疑者が死亡したことの責任を取り警察を退職し、売れっ子作家に転身する。しかし、その犯人検挙率を買われて刑事の技能指導員になり、非常勤で警察職員を兼務している方。本書は、出版業界で発生した殺人事件を、毒島が鮮やかに犯人を特定していくという5編の短編小説。最初から容疑者は数名特定され、その中から真犯人を突き止めていく内容。面白いのは、出版業界の裏表を面白おかしく解説ふうに語り、いかにわがままな人たち、例えば新人賞に応募する若い作家の卵たちや、省を取ったばかりに2作目が書けない作家たちが多いかを作家である中山先生が面白おかしく暴露しているところ。

本作で異色なのは、奥さんが作家先生を殺害する「愛贖者」。ただし、途中で毒島が最初に奥さんと接触するところから、犯人は特定されたようなもので、どんでん返し調にはあらず。今どきではパワハラで社内処分ものの「原作とドラマの間には深くて暗い川がある」という長い題名の作品に登場する番組プロデューサー。部下や社外脚本家を言葉の暴力で辱める行為がこの世界では横行しているのか?数日前の朝日新聞に、映画現場でのパワハラをなくそうという記事がありましたが、常識の通用しないテレビ・映画業界の、特に下請け業者の人権が守られているのか、心配されます。

今日はこの辺で。