中山七里「夜がどれほど暗くても」

中山先生が、芸能人のスキャンダルを追う雑誌社の編集者を主人公としたミステリー、「夜がどれほど暗くても」読了。

週刊誌の副編集長の志賀一家に突然の不幸が襲う。大学生の一人息子が、大学の既婚の先生に横恋慕し、無理心中を図ったうえ、旦那まで殺してしまう事件が発生。普段は他人のスキャンダルを追いかける立場が逆転し、自分が殺人加害者の家族として、メディアに追いかけられる立場になってしまう。志賀が副編集長として担当するのは週刊春潮。事件後に移動させられたのが春潮48。お分かりの通り週刊春潮は文春と新潮の掛け合わせ。春潮48は明らかに新潮45のこと。水田水脈がヘイト記事を書いたことで廃刊となった雑誌。こんな小説を書くと中山七里先生は新潮社から門前払いを食うのではないかと心配になりますが、果たして新潮社に内諾を得ているのか否か?

犯罪加害者家族となった志賀は、妻も家を出てしまい、春潮48内でも陰口をたたかれと、犯罪加害者家族の悲哀を味わう。警察・検察は上層部からの圧力で、早々に被疑者死亡で起訴。そしてもう一人の主役ともいうべき被害者家族である娘の奈々美も、志賀の家族に付きまとう。こうした展開で、息子は実は真犯人ではないということは最初から想像できるのですが、この作品の主題はあくまで犯罪被害者と加害者の家族の問題をクローズアップすること。志賀が死に物狂いで奈々美を守るために活躍を見せるのだが、途中のみじめな中年記者の描写もあり、犯罪加害者・被害者の苦渋を十分に感じさせる作品でありました。

今日はこの辺で。