阿津川辰海「入れ子細工の夜」

阿津川氏が謎解きの本格推理を4編収蔵した「入れ子細工の夜」読了。

非常に凝った謎解きの細工が施されており、一回読んでも理解しにくいほどで、頭が悪くなる一方の私には難しい作品でしたが、理解できた内容だけ記します。

「危険な賭けは、若槻晴海という男が妻の浮気相手の男を殺害。それを目撃した牧村という記者も殺害する。男は、牧村殺害事件調査の名目で、若槻の名刺をもって喫茶店や古本屋をめぐり、「まだらの雪」という本を探し求める。とある古本屋でその本を見つけるが、その女店主が、本物の若槻晴海という名探偵で、男は御用となる。

「2021年度入試という題の推理小説」は、傑作コメディーとも言うべきユニークな作品。

前半はコロナ禍での大学入試で、とある大学の学部でユニークな国語の出題をすると発表があり、それに対するネット上の反響が記され、問題となる推理小説が掲載され、誰が犯人かを受験者に問う。その小説が穴だらけでどうにでも解釈できる内容。試験終了後、再びネット上で正解は何か、こんな問題はありえないなどの意見が交わされる。大学の発表した正解は至極単純なもの。これに対して再び批判が続出。大学は小説の内容に間違いがあったと何か所も訂正し、正解を変えない。そんなことがあるかと怒りが殺到。入試問題を考えた教授や許可した教授たちは懲戒を受けるのでした。

表題作「入れ子細工の夜」は最も難解。

買い物に出ていた有名作家が帰宅すると、部屋にある男がいた。男は編集者を名乗り、作家の原稿を欲している。作家は男が何者かを直ぐに察知して一芝居を打つ。男は妻の浮気相手で、作家でもありスランプに陥っている。作家は妻を殺害しており、その男に罪を擦り付けようと一芝居打つ。そこでは作家が優勢な状況。だが、男は部屋の状況や作家の言葉から、作家が妻を殺したことを見抜き、立場は逆転。ここまでが過去の話。

現代に戻り、男は劇場のオーナーとなっているが、コロナ禍で経営が厳しい状況。男は過去の作家とのやり取りの場面を再現した劇を作家に観劇させ、男は作家を脅迫し、作家が屈服。これらはすべて劇中劇の中であった。

「6人の激昂するマスクマン」は、6つ大学のプロレス同好会の連合組織、全日本プロレス連合会の例会が久しぶりに対面で開催され、各大学の代表が集う。各自はプロレスの覆面と感染防止マスクをかぶり素顔が見えない状態のため、本人か否かは声で判断している。6大学のうちS大学の代表が来ておらず、やがて彼が殺されたというニュースが入る。犯人はここに集まっている誰かではないかと、謎解きが始まる。そのうちに、一人が本人ではなく替え玉出席していることがわかったり、殺人の第一発見者がレフリー役の一人だったり、怪しい人物が絞られていくが、H大学のウルフ山岡が、名探偵役を演じて、兄弟間の軋轢で兄に殺されたことを突き止める。殺された学生は本物のプロを目指していたが、実は兄が弟になりすまして試合に出ていて強かったのであることも判明。それが殺害動機になったことも判明するというお話。

本作の4編のうち、第二作目の「2021年度入試という題の推理小説」が笑えて面白かったという印象。

今日はこの辺で。