読書履歴の簡素化

今までボケ防止も考えて、己の読書歴をできるだけ詳細に残そうと、概略ストーリーを書いてきましたが、手の腱鞘炎(ばね指)の状態が思わしくないため、簡略化することに。

久保坂羊「悪医」。久保坂氏は自身が医師で、その方面の作品が中心。本作はがんの手術をしたものの、その後再発・転移が見つかり医師は治療をするよりも好きなことを余命の期間にした方がいいと患者を諭す。これに反感を抱いた患者は、その医師を恨み、他の治療を探して受けるが、結局がんは直ることがなく死んでいくが、そんな患者と医師のガン治療に対する向き合い方を医師らしい視点で描いた作品。確かにもう治療しようがないから自宅で好きなようにした方がいいと、直接言われることがいいことなのか、考えさせられる。

吉田修一「犯罪小説集」。2泊3日の旅行に持参した文庫本。5編の短編からなる。

「青田Y字路」は、小学生行方不明事件が発生し、中国から来た親子のうち、息子が犯人ではないかと噂され、それが悲劇を生む。彼は犯人ではなかったのだ。

「曼珠姫午睡」。英里子は裕福で目立つ子、とゆう子は貧乏で目立たない子。そんな二人が成人してからは逆の人生を歩むがごとく、ゆう子は水商売、男関係を繰り返す。英里子はそんなゆう子を軽蔑しながらも、何か自分に不満足感を持つ。

「百家楽餓鬼」。大王製紙の元会長のの賭博狂いをベースにした、賭博に狂う男の物語。

万屋善次郎」。限界集落にUターンしてきた男が、村おこしにせっせと取り組むが、集落の一部住民の悪意によって、村八分状態になる悲劇。

「白球白蛇伝」。一度は頂点を経験したプロ野球選手が、あっという間に転落していく。一度味わった頂点をなかなか離れられない男の悲劇。

いずれの作品も、読み応えのある作品でありました。

吉田修一「ウォーターゲーム」。一時話題になった水道の民営化という社会問題をベースに、外国企業と日本の政治家、商社、コンサル企業などが、なかなか動かない民営化への移行方針について、何とか前に進めようとして画策する姿を描く。スケールは大きいが、内容的にはいまいち共感が持てない作品でした。

道尾秀介「花と流れ星」。霊現象探求所の所長である真備庄介、助手の北見凛、作家の道尾の3人が、霊にまつわる事件、事象に立ち向かう短編連作小説。

「流れ星の作り方」。凛が不思議な少年に出会い、友達の両親が何者かに殺され、まだ犯人が捕まっていないので、犯人を当ててほしいと依頼。殺害されたのは少年自身の両親であったことを真備が言い当てる。

「モルグ街の奇術」。真備と道尾の行きつけのバーで、片腕のない外国人からある賭けをしないかと話しかけられる。彼は、自分の腕をまじくで消したと言っているが、どうやって消したかを当てたら好きなだけのお金をあげる、当てられなかったら二人に腕を消すという賭けだった。

「箱の中の隼」真備のところにとある宗教法人の信者女性が、真備に本部を見学してほしいと言って現れ、真備は道尾を真備になりすませて見学に行かせる。そこには狂った教祖がおり、信者女性は教祖の娘で、宗教法人を潰したかったことは判明。

「花と氷」。発明を趣味にする老人が、自分の孫を発明品を乗せた重い棚の倒壊で死なせたことから、罪の意識を持ち、それがとんでもない仕掛けで元気に遊ぶ子供を死に追いやろうと企むが、直前に真備が見抜く。

ちょっと無理な話が多く、私には共感できる部分がなかった。

道尾秀介「ソロモンの犬」。相模大学の同級生4人の周辺で起きる事件、一つは女性准教授の幼い息子の交通事故、その母親である准教授の自殺、そして学生の一人である秋内の自転車事故に関して、誰がどう関与したかを、主に秋内と間宮という准教授が解き明かしていくさまを描く。犬とは、交通事故で亡くなった子供が犬のリードに引っ張られたことから事故が発生し、何が犬を刺激したのかを謎解きする部分が大きいことから付けられたタイトル。最後にちょっとした落ちがあるが、犯人も意外な人物でありました。

喜多川泰「運転者」。運転者とは運を好転させるタクシーの運転手という意味。

生命保険の代理店で外交をしている主人公が、大口の契約が解除されたことから自分には運がないと悲観。そこへ現れるのが運転者の運転するタクシー。運転者は「機嫌の悪い時はうまくいかない、いつも上機嫌でいれば運が開ける」等々と述べるが、主人公は半信半疑」しかし、運転者が主人公の置かれている現在の状況を完全に把握していることから、次第に信じるようになり、ついには運はポイントカードと同じで、「貯めて使うもの」を理解していく。最後には大口の保険契約に結び付きそうなハッピーエンドでした。

「運転者」については、非常に納得する部分もあり、人生訓を読んでいるようでありました。

今日はこの辺で。