元裁判官の瀬木比呂志とジャーナリストの清水潔共著「裁判所の正体 報復を着た役人たち」読了。二人の対談形式で、主には清水氏が現在の裁判所、裁判に関する実態を瀬木氏に聞くような対談形式の著作で、瀬木氏が「絶望の裁判所」「ニッポンの裁判」で書かれた内容が対談で語られています。清水潔さんもまた、足利事件や桶川ストーカー事件で、裁判の実態について疑問を持たれているジャーナリストでもあるので、的を射た質疑が綴られます。
最高裁事務総局による日本の裁判所、裁判官が完全に支配されている現状から、思い切った判決を出せない裁判官の増殖が続いていることは誠に由々しき事態。
行政裁判についても、そのほとんどが行政側の勝訴になっている実態は、正に行政には逆らえないという司法官僚的支配構造の賜物。私自身が行政訴訟を経験し、つい最近上告不受理の結果が出たところであり、こんな裁判所に少しでも期待を抱いたことが、全くの間違いだと思い知らされました。
清水氏が追った足利事件では、既にDNA鑑定でほぼほぼ真犯人が特定されているにもかかわらず、警察・検察が動けない事情には驚愕しました。初期の科捜研のDNA鑑定が非常にあいまいで、足利事件と同じように怪しい鑑定が7~8件あり、そのうちの一つである飯塚事件で、DNA鑑定を最大の証拠として死刑が確定した久間三千年さんが、既に死刑執行されており、これを掘り返すことは、国家が殺人を犯したことが公然となる故との考察。では、飯塚さん及びご家族の名誉はどうなるのか。
日本では衝撃的事件が起こるたびに、被害者遺族の感情などをジャーナリズムが鼓舞して、死刑廃止論議は一向に進みませんが、今のような裁判の実態がある限り、国家による無辜の人間を殺人してしまう事態が再び発生する恐れがあり、やはり死刑だけは廃止すべきと、最近思う次第です。
今日はこの辺で。